岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 経済情報学部⑤ 稲垣雅一  

出会いの季節

岐阜聖徳学園大学経済情報学部准教授 稲垣雅一

 毎年四月が来ると大学に入学した時のことを思い出します。桜の花が舞い散る華やかなキャンパスに通いながらも、私は憂鬱な日々を過ごしていました。当時、浪人を経て大学に入学したものの、第一志望の大学には落ちてしまったため、大学に通いながらもう一度受験すること(いわゆる仮面浪人)を本気で考えていました。しかしながら、結局は仮面浪人をせずに、入学した大学をきちんと卒業しました。

 なぜ仮面浪人をしなかったかと言えば、二つの大きな出会いがあったからです。一つ目が大学の講義で「経済学」と出会ったことです。経済学という学問分野は、例えば、「希少な資源を競合する目的のために、選択・配分する方法を考える学問」とか、「インセンティブ(動機)を考える学問」などと様々な言葉で形容されますが、当時の私としては「経済という形の無いものに理論的な枠組みを当てはめる」と解釈し、知的好奇心をくすぐられ、とても魅力的に見えたことを覚えています。

 二つ目は「ゼミの指導教官」との出会いです。学生の時から今現在でもお世話になっている指導教官の先生は、経済学をより深く学ぶために大学院進学という選択肢があり、研究者という道があることを具体的に示してくれました。経済学をさらに学びたいと考えていた私が、大学院進学という明確な目標を持つきっかけになりました。

 この二つの出会いによって私の憂鬱だった後ろ向きの気持ちが、徐々に前向きな気持ちに変わっていきました。その後の紆余曲折を経て、現在は経済学の一分野を研究・教育することを生業としています。四月は「出会いの季節」とも言われています。このコラムは中学生が主な対象であるのに、大学時代の話をしてしまいましたが、ヒトに限らずモノやコトなどを含めた大きな視野で見れば、誰にでも様々な出会いがあるかと思います。コロナ禍で何かと後ろ向きな気持ちになりやすいとは思いますが、前を向いて頑張れるような素晴らしい出会いが皆さんにあることを願っています。(2021.4.18岐阜新聞掲載)