岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 経済情報学部⑥ 大成利広 

金銭感覚を身につけよう

岐阜聖徳学園大学経済情報学部教授 大成利広

 商品の購入やサービスを受けたときの支払いとして、最近、キャッシュレス決済を利用する機会が増えています。現金払いだとお金を使ったという感覚は生じますが、スマホ決済やクレジットカード決済で支払いを済ませると、お金を使ったという感覚が薄れ、いつの間にかたくさんのものを買ってしまうことがあります。このような金銭感覚の麻痺を回避する方法として、お金の出入りをチェックする必要があります。つまりお金の出入りの記録をつけることです。皆さんだと小遣帳やお家では家計簿をつけることで金銭の出入りが明らかになります。この小遣帳や家計簿は、現金の出入りのみを記録する単式簿記といわれる技法です。

 ところで、一般的に会社などが取引で使うのは、複式簿記という記録方法です。皆さんは、買い物をしたらただ財布の中からお金が無くなったと思うかもしれませんが、実際のところは、お金を使った分、自分自身にとって価値あるものが手元に残っています。例えば、1万円で自転車を買ったとすれば、1万円のお金が無くなったとだけと感じるかもしれませんが、実際には1万円の価値の自転車という財産を持つことになるのです。複式簿記は、ただ1万円の支出があったことだけを記録するのではなく、この1万円の支出と、1万円の価値の自転車を財産として得たという両方の記録をする方法なのです。

 この複式簿記というのは、500年以上前から使用されている技法で、イタリアの数学者ルカ・パチョーリが『スムマ』という本で紹介して世界に広まったものです。驚くべきことは、この500年以上前の複式簿記のルールが現在でもほとんど変わらずに使われていることです。さらに世界中の会社がこの複式簿記のシステムにより取引の記録である帳簿をつけており、この帳簿から財務諸表という会社の財産の状態や業績を表した表を作成しています。この財務諸表からのデータを使って財政や業績の良い会社や悪い会社を見分けたりする事に使っています。

 皆さんも将来的には就職したり、起業したりすると思います。まず手始めに小遣帳をつけ金銭の出入りを記録することによって、金銭感覚を身につけ、そしてその後、一般社会で使われている複式簿記を学んでみてはいかがでしょうか。この技術を身につけることで、将来就職するときに会社の業績を知るうえで役立つこともあるかもしれません。(2021.4.25岐阜新聞掲載)