岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 経済情報学部⑪ 佐藤 淳  

行動経済学とは?

岐阜聖徳学園大学経済情報学部准教授 佐藤 淳

 経済学は18世紀後半に誕生したと言われています。これに対して行動経済学は1970年代後半に登場した経済学の新しい分野です。なぜこのような分野が登場したのでしょうか?伝統的な経済学は、人々は十分に考えた上で経済活動を行うという「合理性の仮定」を基礎に分析を組み立てます。この合理性の仮定によって人々がどのように経済活動をするかということを理解し、どう行動するかを予測することもできるようになります。

 しかし、伝統的な経済学が仮定するように人々が行動しているかというと必ずしもそうではない場合があることがわかります。買い物の場面を考えてみましょう。伝統的な経済学によれば人々は最も満足のいく買い物をしているということになります。具体的にはどのような買い方になるのでしょうか?これに近い例は小学校のときの遠足のおやつを買うときだと思います。(私が小学生だったときはおやつは300円まで、だったように思いますが皆さんの時代にはそうした約束がまだあったのでしょうか?)商品棚のお菓子を手に取ってしばらく考えてから買い物かごに入れて、次のお菓子を手に取ってから思い直して前にかごに入れたお菓子を棚に戻して... こうして試行錯誤をくりかえして予算ぴったりになったときは満足するという感じです。

 けれどもむだ使いをして「なんであんなものを買ったのか」を思った経験は誰にでもあります。行動経済学は、伝統的な経済学と人々の実際の行動のズレに注目する経済学です。ズレに注目するところからスタートして行動経済学はさらにもう一歩踏み込みます。きっちりと計算をしないで買い物をしているとはいっても、まったくでたらめな買い方をしているわけではなく、そこには何らかの「規則性」があるのではないかといろいろ考えるのです。そうすると、多くの人に共通するような規則性が結構あることがわかってきました。例えば、人は自分の好みをはっきりと自覚しているわけではなく、その時の状況によって判断が変化します。そうした発見が積み重ねられて今日の行動経済学ができあがりました。(2021.5.30岐阜新聞掲載)