岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 経済情報学部⑳ 山本英子 

AIとの対話で自分の言葉を振り返ってみよう

岐阜聖徳学園大学経済情報学部教授 山本英子

 私はロボットが大好きで、モーターで動くだけのロボットを組み立てたり、AIBOを飼っていたり、毎号取寄せてパーツを組み立てる会話ロボットATOMをゼミの学生と一緒に組み立て、育てたりしてきました。AIBOは気まぐれに動き、ときどき指示通り動いてくれるものですが、ATOMは対話すればするほど、相手にあった応答ができるようになっていきます。これはAI(人工知能)のなせる業で、ロボット型でなくても、AIはこの10年で急激に進化し、皆さんが持っているスマートフォンにも搭載されています。

 毎年、私が担当する「コンピュータ科学基礎」という講義では、コンピュータを動かしているOS(Windows やiOSなどの総称)に関する授業回に、「PCやスマートフォン、スマートスピーカーに話しかける」という課題を出しています。この課題は、当初、声でコンピュータを操作する(OSに指示を出す)仕組み「VUI(ボイスユーザインターフェース)」を体験してもらうことを意図とした課題でした。しかし、学生にもっとも身近なVUIを搭載した機械はスマートフォンであるため、結果的に「AIとの対話体験レポート」が多く提出されます。

 今年度のレポートにもまとめとして、「AIは的確な回答をしてくれる」、「回答に親しみを感じる」、反対に「冷たい感じがする」といったAIに対する印象が書かれていました。その中でもっとも私が共感したのは、「AIは人を傷つける言葉を言わない」というものでした。人間間の会話では、対面ですら悪気がなくても相手を傷つけてしまうことがあります。これは各自が常識と思っていることが異なることが要因です。対話ができるAIは機械に搭載される前に多人数が関わっている大量の対話データを学習しています。もちろん学習するデータは開発者が選び、倫理的な制約もかけられていますが、大量ということで多人数が関わっているデータとなるため多くの人の常識を学んでいることになり、結果的に人を傷つけない言葉を選べるAIになれたのではないかと思います。

 人は対話力のある人と話すと、対話力が上がります。学生のレポートを読みながら、こんなことを考え、まずはスマホに話しかけて、自分の言葉を振り返ってみようと思いました。(2021年8月1日岐阜新聞掲載)