岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾⑳ 教育学部 学校心理専修 阿部慶賀

幽霊の正体みたり 枯れ尾花


岐阜聖徳学園大学 教育学部 学校心理専修 阿部慶賀

問 心霊現象はなぜ起きるのでしょうか?

 秋に入り、怪談のシーズンは過ぎましたが、皆さんは何か不可解な体験をしたことはありますか。人は不思議な体験をすると幽霊だ、呪いだと、超常現象として考えてしまうことがあります。しかし、その多くは私たちの心や脳がしでかしたいたずらが原因です。

 たとえば、金縛りは典型的な心霊現象ですが、この現象の正体も脳のいたずらです。金縛りになるのはどんな時が多いでしょうか。昼間の活動時より、夜の就寝時に起こる印象はありませんか。私たちが寝ている最中には、脳から体を動かさないようにする指令が出ています。このおかげで私たちは静かに眠り、休むことができるのです。しかし、まれに目が覚めても、脳から体の動きを抑える指令が出続けてしまうことがあります。その結果、頭は目覚めているのに体を動かせなくなります。これが金縛りの正体です。

 何もない場所に人の顔が映っている気がする心霊写真を見たことがある人もいるでしょう。しかし、私たちには本来、人の顔に敏感に反応する心の機能が備わっています。ここに(:▽)という記号を並べてみましたが、これが笑顔のように見えた人もいるのではないでしょうか。これはパレイドリアと呼ばれる現象の一つで、人間が知人や仲間を見つける上で役に立つ大事な心の働きだと考えられています。

 私たちは自分の知識では説明しきれない不可解な出来事に出会うと、つい別の何者かのせいだと思いがちです。旅先での持ち物の紛失を盗難だと疑い、やたらと事故の多い場所を心霊スポットだと考えてしまうものです。これらは実際にはただの不注意によるトラブルでしかないのでしょう。
しかし、こうしてひとまず他人や霊のせいにした自分を納得させる仮の説明を作ることで、私たちは日常の細かいことに気を取られずに済んでいるのです。

 私たちは目の届かない物事、目に見えない物事に、突飛な説明をしてしまいます。しかし、これも人間の持つ想像力、そして創造力と言えるのではないでしょうか。

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