岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾㉖ 教育学部 数学専修 福田茂隆

三者関係と数学

岐阜聖徳学園大学 教育学部 数学専修 福田茂隆

江戸時代初期の算術教科書「塵劫記(じんこうき)」(吉田光由著)には、以下のような「あぶら量り分け」の文章題(いわゆる、あぶら分け算)が載っている。

【問題】
『単位の油の入っている大容器と、7単位の容積を持つ空の中容器と、3単位の容積を持つ空の小容器が与えられている。3種の容器で相互に移しかえることで、大容器と中容器に5単位ずつ等しく油を入れよ』解説を読む前に、必ず自分で図を描いて考えて、三者関係を楽しんでください。

【解説】
解法を2通りあげる。表の通りである。7単位+3単位=10単位、なので、大容器は油の供給と一時貯蔵の役割を果たしているだけである。

解法1は、次の式で表すことができる。
7-3-3+7-3=5
これは、中容器で2回すくい、小容器で3回くみ出すことにあたり、7単位×2+3単位×(-3)=5単位というわけである。

解法2は、小容器で4回すくい、中容器で1回くみ出している。
こちらは、7単位×(-1)+3単位×4=5単位、というわけである。
したがって、この問題は方程式7x+3y=5をみたす整数の組(x,y)を求める問題につながる。

《あぶら分け算》は数学の問題であるが、三容器の活用法の考察を人間関係の理解に活かす教育実践の研究がある。
紙面の関係で、ここではその紹介はできないが、数学の問題にもそのような一面があることも知っておかれると良いと思う。

イメージを拡大
岐阜新聞 真学塾㉖ 教育学部 数学専修 福田茂隆


関連ファイル