岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾㉚ 教育学部 体育専修 煙山千尋 

女性アスリートの健康とアスリート・ファースト

岐阜聖徳学園大学教育学部准教授 体育専修 煙山千尋

 アスリート・ファースト(選手第一)という言葉が、2020年東京オリンピック・パラリンピックの話題で耳にすることが増えました。アスリート・ファーストが実現すると、競技環境やサポート体制が整い、選手の心身の健康状態が良くなるため、選手が十分に競技力を発揮できるようになります。一方で、高い競技力を発揮することや勝つことへのプレッシャーやストレスを抱えている選手は、心身を追い込んで不健康な状態になる人もいます。

 女性アスリートの中には、体重や体脂肪を無理に落として無月経になったにもかかわらず、月経がないことは頑張っている証拠であり強い選手の証であるという誤った固定観念を持つ選手がいることが報告されています。また、理想の体型を目指すあまり、食べることが怖くなったり、食べてから後悔したり、不健康な減量をして摂食障害に陥る選手がいることも報告されています。この傾向は、特に、競技力向上のために減量が求められる競技(陸上長距離など)、容姿が採点に影響を及ぼす競技(体操、新体操、フィギュアスケートなど)、体重階級がある競技(柔道、レスリングなど)の選手に多く見られます。

 近年、国際的に問題となっている女性アスリートの健康問題として、「女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad=FAT)」があります。FATは、①食事などによるエネルギー摂取量が不足した状態(利用可能エネルギー不足)②運動性無月経③骨粗しょう症の三つの症状がそれぞれ関連して発症する健康問題です。そして、FATは、トップアスリートだけでなく、活発に運動する運動部員などの女性アスリートなら誰でも陥る可能性があることがわかっています。

 FATを発症すると競技力の低下や競技の中断に至ることもあり、競技への努力が皮肉にも、選手生命を脅かす結果となってしまうことがあります。そのため、健康的な減量方法やトレーニング方法などの知識を持つことが重要です。また、選手を取り巻く家族、監督・コーチなどとも協力をし、FATを未然に予防し、解決・改善に向けて努力することが、アスリート・ファーストの実現につながると考えられます。

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