岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾㊹ 教育学部 特別支援教育専修 野村香代  

今の自分を"受け入れる"ということ

岐阜聖徳学園大学教育学部専任講師 特別支援教育専修 野村香代

「あなたは、今の自分自身に満足していますか?」

 ありのままの自分を受け入れ、自分自身に満足している気持ちは、「自己肯定感」や「自尊感情」と言われています。内閣府の『令和元年子ども・若者白書』によると、日本の若者(13~29歳)のうち、"自分自身に満足しているか"という問いに対して「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した割合は45.1%にすぎず、アメリカ(88.0%)やイギリス(80.1%)、韓国(73.5%)といった諸外国の若者と比べて、「自己肯定感」が低いことが示されました。謙虚さが求められる日本では、自分自身に満足をしていると感じにくい環境であることも一つの要因と考えられています。

 では、「あなたのいいところは何ですか?」

 この質問は、受験等の面接の際に、必ずと言っていいほど向き合うことになると思います。シンプルな問いですが、答えることが難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。

 一般的には、「いいところ=他者と比較して得意なこと、優れていること」をイメージします。けれども、人よりも「優れている」と言い切れるほど、勉強やスポーツで結果を残している人は一握りです。次第に、自分にはいいところがないのではないかという不安に陥ることもあるでしょう。

 では、「いいところ=できているところ」「いいところ=続けられているところ」と考えてみてはいかがでしょうか。そうすると、"朝、自分一人で起きること"や、"朝ごはんはしっかりと食べること"、"部活に休まず参加していること"も、いいところに含めることができます。誰でもやっている当たり前のことだと感じるかもしれませんが、当たり前のことでも、きちんとこなしていくことができるということは、長所であるといえるでしょう。

 このように、「自己肯定感」は、"勉強ができる""スポーツが得意である"といった能力面への自信だけでなく、"今の自分に価値がある""大切である"といった存在への自信の2つの側面に支えられています。「できなさ」ばかりに目を向けて、届かない理想像を羨むよりも、今の自分が「できている」ことに注目して、その頑張りを認めることで自信に変えていけるのではないでしょうか。その上で、次に手が届きそうな小さな目標を立てて、一歩一歩着実に歩んでいくことが、成長につながると考えます。