岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾㊻ 教育学部 玉置崇

何ごとも数学で考えてみる

  岐阜聖徳学園大学教育学部教授 玉置崇

 次のような問いかけをもらったことがあります。

 「年齢を重ねるほど、1年間を短く感じるという人が多いのですが、どうしてだと思いますか?洒落た回答を期待していますよ」

 この問いを出された人は、さらに「あなたは数学教師なのだから、数学的に答えてください」と付け加えられました。

 皆さんはどうしてだと思いますか。その方は次のように回答されました。

 「10歳の人と60歳の人がいたとしましょう。10歳の人の1年間は、人生の10分の1です。60歳の人の1年間は、人生の60分の1です。10分の1と60分の1ではどちらが小さいですか?そう、60分の1の方が小さいですよね。だから、歳を重ねると、1年間を短く感じるのです」

 これを聞いたときには、なるほど!と思いましたが、よく考えれば、どの人にとっても1年間という時間は、同じ長さのはずです。とはいえ、数字を用いて説明されるとなんとなくその通りだなと思えませんか。

 それからは、数学の授業をしていてこの事象を数学の世界で表現すると、どういうことになるだろうかと考えるようになりました。

 例えば、共通因数を教えているときです。生徒に「この学級の共通因数は何?と言われたらどう答えますか」と質問したことがあります。皆さんはどう答えるでしょうか。

 生徒が出した回答は「学年」「学級名」「担任の先生」などでした。確かに、学年も学級名も担任の先生も共通しています。この問いと回答を聞いて「共通因数というのは、こういうことか」とつぶやいた生徒がいました。

 確率・統計の授業をしているときです。「数学のテストが返却されました。点数を見ると、平均点より低いのです。どのように伝えたら、お母さんに怒られずにすむでしょう?」と問いかけたことがあります。

 「学級全体の点数分布を示して、自分のテストはそれほど低い点数ではないと説明する」「平均点が必ずしも中央値ではないことを知らせる」などの意見が出されました。

 中には、「怒ることと怒らないことが同様に確からしいといえれば対策を考えられるけれど、私のお母さんは、そのときの気分によって対応が違うので、数学的に考えることは不可能です」と発言した生徒がいて、教室は大爆笑となりました。

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