岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

第四紀研究:北海道の降水変動に対するアジアモンスーンの影響を実証 ー北海道南西部・大沼の過去350年間の湖底堆積物の解析ー

 本学教育学部川上紳一教授は、岐阜大学・勝田長貴准教授らとの共同研究で、北海道南西部に位置する大沼で湖底堆積物掘削コアの分析を行って、北海道の降水変動に東アジアモンスーンが影響していることを実証的に明らかにしました。
 解析したコアには、北海道駒ケ岳の火山活動による火山灰層が挟まれており、これらを鍵層として用いることで堆積物の年代測定精度を高めました。
 この堆積物にはマンガンを含む鉱物(菱マンガン鉱)が含まれており、その堆積が夏季の貧酸素化した深層水塊で形成されたもので、東アジアモンスーンの影響で夏季の降水量が減少した時期にみられることが示されました。
 この研究成果は、2020年10月20日(金)に国際学術雑誌Quaternary Science Reviews誌に掲載されました。

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北海道南西部の古気候復元図。大沼の湖底堆積物中のマンガン含有量は小氷期に増加し,1900年ごろに減少する。それと反比例するように,降水指標を示すTi/Si比やハンノキ属の花粉数は,小氷期に減少,1900年ごろに最大となることが分かり,大沼におけるマンガンの沈殿は,降水量の少ない夏季のアジアモンスーンの強度に起因していることが明らかとなった。これらの時期は,韓国や中国で復元された夏季アジアモンスーン強度指標の変動と対応しており,その一方で,これらの変動は,中海(島根県)の貝形虫の記録から復元された夏季アジアモンスーン強度とは逆位相であることが分かり,北海道の数十年規模の夏の降水変動は,中国を中心とした大陸性気候の変動を強く受けていることが明らかなった。