岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 外国語学部① 伊佐地恒久  

批判的思考(クリティカル・シンキング)って何?

岐阜聖徳学園大学教授 外国語学部長 伊佐地恒久

 皆さんは、批判的思考(クリティカル・シンキング)について知っていますか?批判的思考は、「21世紀型スキル」の一つとして、これからの社会で生きていくためにとても重要なものだと言われています。「批判的」というと、相手を非難するという否定的な印象を持つかもしれません。しかし、それは違います。批判的思考とは、情報をうのみにするのではなく、自分の考えが正しいのか振り返りながら、証拠に基づいて論理的に考えることです。情報化社会といわれる現代は、膨大な情報が溢れています。その中から、正確で役に立つ情報を見極めて活用するには批判的思考が必要です。

 批判的思考はスキルであり、誰でも身につけることができます。その基本は、意見や主張をうのみにしないで、根拠をはっきりさせ、それが確かなものであるかを確認することです。例えば、中学校の英語の教科書(New Horizon 3 東京書籍)のなかで、アメリカの高校生が日本の学校に制服があるメリットの一つとして、毎日、何を着ていくか考える必要がないことを挙げています。確かに一つの考え方ですが、毎日何を着ていくかを考えることで、服装への意識が高まるという意見もあるかもしれません。それぞれの意見と根拠について資料を調べ検討する中で、知識と理解が深まり自分の考えが出来上がっていきます。

 批判的に思考するためには、スキルを学ぶことに加えて、批判的に考えようとする態度(批判的思考態度)が必要です。例えば、判断をくだすときは、できるだけ多くの事実や証拠を調べたり(証拠の重視)、物事を決めるときは、客観的な態度を心掛ける(客観性の重視)ことです。いつもこのような態度を取り、批判的に思考する必要はありません。友達と雑談をしているときにこのような態度でいると、理屈っぽいと嫌われてしまうかもしれません。批判的思考は必要な場合に発揮できれば良いのです。

 21世紀を生きていくためには、知識に加えて、思考力が欠かせません。皆さんには、両方を兼ね備えた「生きる力」をもった人に成長してほしいと思います。(2020.11.1岐阜新聞掲載)

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