岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 外国語学部② 武井 寛  

ブラック・ライヴズ・マター運動を考える

岐阜聖徳学園大学外国語学部准教授 武井 寛

 先週はアメリカ合衆国大統領選挙の投票日でした。選挙戦では新型コロナウィルスの対応を筆頭に、様々な争点が話題になりました。その中でも今年は人種問題、特にブラック・ライヴス・マター(BLM)運動に大きな注目が集まりました。今回はこのBLM運動について考えていきましょう。

 BLM運動が今年再燃した発端は、5月25日にミネソタ州ミネアポリス市で黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警官に殺害された事件でした。この事件を契機に全米の各都市だけでなく、世界中で抗議運動が起きました。BLM運動は黒人を暴力的に取り締まる警察や、黒人の命が簡単に奪われてしまうアメリカ社会そのものに対する意義申し立てなのです。

 みなさんはこのBLMがどのように始まったかご存知でしょうか? 2012年2月、17歳の黒人少年トレイボン・マーティンくんが自警団のジョージ・ジマーマン氏に射殺されるという事件が起きました。この事件に対して2013年7月13日にジマーマン氏の無罪判決が出ました。これを受けて、活動家のアリシア・ガーザ氏がフェイスブックに「黒人の命が軽んじられることへ驚く」と同時に「黒人の命を諦めないで」と投稿しました。これに対してガーザ氏の友人で活動家のパトリース・カラーズ氏が#BlackLivesMatterというハッシュタグをつけて返信すると、"Black Lives Matter"という言葉はSNSを中心に瞬く間に広がっていきました。その後コミュニティ・オーガナイザーのオパル・トメティ氏と共に三人はBLMを立ち上げて活動を続けています。こうして黒人女性三人によって生まれたBLM運動は強力な指導者がいるわけではなく、各地で緩やかに連帯した脱中心的な運動と言えます。今年のBLM運動は、これまで繰り返されてきた警察の暴力へ抗議を続けていた中でフロイド氏殺害事件を受けて、大きなうねりとなってアメリカ社会に問いかけたのです。

 現在BLM運動には若者を中心に様々な人種や国籍の人々が参加しています。フロイド氏の事件以降、日本でも東京、大阪、名古屋など各地でBLM運動は起こりました。日本でも他人事ではない問題として捉える動きが、少しずつですが出てきています。BLM運動はこうした活動を通して人々が学び、状況を改善する可能性を秘めています。全米オープンで優勝した大坂なおみ選手が犠牲者の名前入りのマスクをして抗議の意思を示したことは有名です。彼女は「当事者として一人一人が考えてほしい」と訴えました。みなさんもこの問題について考えることから始めてみませんか?(2020.11.8岐阜新聞掲載)

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