岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 外国語学部⑲ 河原﨑やす子

ジェンダーについてしっかり考えよう

岐阜聖徳学園大学外国語学部教授 河原﨑やす子

 みなさんは「女正月」という行事を聞いたことがありますか。私の子供時代には正月過ぎに祖母が女正月に呼んでくれ、叔母や母など女の人ばかりでにぎやかにお昼のごちそうを食べたものです。でもなぜ「女」が「正月」につくのでしょう。それは、かつて正月が大掃除から正月料理の材料買い出しと調理、来客のもてなしと、女たちが行う一大イベントだったからです。女は作ってもてなす人、男は座って料理を楽しむ人と役割が分かれていました。そしてへとへとに疲れた女たちが疲れを癒し楽しむために、自分たちだけの正月をし直したのが女正月だったのです。

 今このならわしはほぼ消えました。なぜかというと、男女の役割や観念が大きく変化したため、言い換えるとジェンダーの変化の結果なのです。そういった変化の例は皆さんの身近にもたくさんがあります。たとえばランドセルの色、これはいま男女ともに色とりどりですが、ちょっと前までは赤と黒ばかりで、女の子は赤、男の子は黒でしたね。こんなこともジェンダーの変化を表しています。

 でもいったいジェンダーって何でしょうか。ジェンダーとは、社会や文化の中で出来た男女の性別にかかわる観念をさします。「男なら」「女なら」こうだ、とか、こうすべき、というジェンダーの意識や役割は世界中どこにもあって、以前は男が主で女は副というのが男女の位置づけの基本でした。長い間、男女は対等ではない、男と女は違うんだからと思いこまれてきたのです。ところがこのジェンダーの観念が急速に変化してきているのです。それは男女が対等だという考え方が世界中で共有されたためです。このグローバルな規模でのジェンダー観の変化は、急速に皆さんのまわりの世界を変えています。上に挙げた例もそのひとつです。でも中にはその流れについて行けない人もいます。オリンピック組織委員会の会長交代はついこの間の事件ですね。女の人ってこうだよね、という発言がジェンダー平等に反するとして、国内ばかりか国際的な非難を浴びたのでした。

 これからの未来を担うみなさんたちは、こういうジェンダー観の変化をしっかりと理解し、ジェンダー平等を意識して行動する必要があります。もしかすると親世代のジェンダー観は違うかもしれません。それに迷わされずに、皆さんは今の時代のジェンダー意識を身につける必要があります。社会人として、また国際人として、活躍するための必須アイテムなのですから。(2021.3.14岐阜新聞掲載)

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