岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 看護学部⑥ 古澤洋子 

新型コロナウイルス感染症予防とともに「健康二次被害」を防ぎましょう

               岐阜聖徳学園大学看護学部教授 古澤洋子

 2020年からの新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ感染症)は感染拡大の第5波に入り、長期化しています。コロナ禍で感染症予防は最も重要ですが、コロナ感染症による「健康二次被害」1)にも注意が必要です。健康二次被害には、身体活動の低下がもたらす免疫力の低下、肥満や生活習慣病の悪化、ストレスによる心の病、高齢の方は転倒・骨折のリスクが挙げられます。コロナ感染症が発生する前と比較して、皆さんの生活や身体活動量はどのくらい変化したでしょうか。

 ある研究によると、日本の都市部在住の高齢者1600名(平均年齢74歳±5.6歳)を対象に2020年1月(コロナ感染症前)と4月(緊急事態宣言下)の身体活動の時間を比較した調査では、245分から180分に約3割減少していたとの報告2)があります。外出を控え日常の運動量や人と関わることが減ると、身体にはどのような影響が見られるのでしょうか。

 運動量と免疫機能は関連しているので、免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。また、運動量が減ると筋肉に刺激が行かず、筋肉量が減り歩行困難や転倒・骨折のリスクが高くなります。さらに、筋肉への刺激が行かないことで、血糖値の上昇に影響が見られます。身体活動の消費カロリーより飲食の摂取カロリーが多ければ、筋肉細胞内にも脂肪が蓄積しやすくなり、血糖値を下げる働きをするインスリンの抵抗性が大きくなり(効きが悪くなる)血糖値の上昇につながります。血糖値だけでなく血圧や脂質も上がりやすくなり動脈硬化や生活習慣病の進行にも影響してきます。

 健康二次被害を防ぐために3つのポイントを紹介します。

1.1日8000歩(高齢の方は7000歩)を目標にした有酸素運動

2.たんぱく質を意識した1日3食のバランスの良い食事

3.適度な運動による質の良い睡眠

 他に、本来なら、人と会って会話するなどのかかわりも健康的な生活を維持するには不可欠なことですが、今はがまんの時です。健康二次被害を防ぐために、今できることを頑張りましょう。(2021年9月26日岐阜新聞掲載)

 1)健康二次被害防止コンソーシアム

 2)Yamada M,Arai H.et al.,J Nutr Health Aging.2020;24(9):948-950.