岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 看護学部⑩ 原田浩二

将来の自分

岐阜聖徳学園大学看護学部准教授 原田浩二

 ドイツ出身の発達心理学者エリクソン(Erik Homburger Erikson 1902~1994)は、人間の人生を8段階に分け、それぞれの段階に発達課題、心理社会的危機(psychosocial crisis)、重要な人間関係などを設定しました。人生の中で、人間の発達には、「アイデンティティ(自我同一性)」の確立がもっとも重要であり、「アイデンティティ」という言葉を確立した有名な人物です。

 「アイデンティティ」を私なりに説明すると「自分で自分を決められること」です。これは、思春期の皆さんに与えられる課題です。そして思春期の重要な人間関係は、親や家族ではなく「仲間集団」です。

思春期になると、からだが大きく成長し、小学校から中学、高校へと環境が変わり、部活や課外活動も増え、友達も変わっていきます。しかし皆さんが、このような変化を感じることはできないと思います。人生の課題は、おのずと自然に与えられ、あまり意識することができません。

 その変化を感じられなくとも、人生の階段を登っていくには、「自分で自分を決められる」という課題を乗り越える必要があります。すなわち、「将来の自分は、自分で決めること」です。そのためには親や家族から少し離れ、多くの友達や先輩などに関わることが重要です。そして「友達の家庭の様子は自分の家庭と少し違う」、「自分の家の常識は他とは違う」「親のルールや価値観は友達とは違う」ということに気づいて下さい。その違いに気づけば、一定の「枠」や「型」にはまることなく、自由に将来の自分、これからの進路を自分で決めていけるかもしれません。

 看護師を目指す生徒さんも多いです。日本の200万人が看護師免許をもっていますから、国民100人に1~2人は看護師免許を持っています。親が看護師で、親の影響を受けて看護師を目指す生徒さんもいます。親の影響を受けたとしても「自分の将来」は自分で決めなくてはなりません。そして、自分で決めた以上、最後まで成し遂げる責任が伴います。それは、大人になるための道のりです。

 ちなみに私は高校生の時、猛反対を受けて看護の道を選びました。看護への道、看護師になった後の道のりは、困難で辛いことが多いです。しかし「他の道を選んでいたら」と考えることはありません。アイデンティティ(自我同一性)とは、我の心と身体と社会が一致することです。(2021年10月24日岐阜新聞掲載)