岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 看護学部⑬ 加藤和子

年を重ねること

岐阜聖徳学園大学看護学部専任講師 加藤和子 

 人は年を重ねることにより、文字が見えにくくなったり、話している言葉がよく聞き取れなくなったり、また、物忘れをしたり、認知症という病気にもなりやすくなります。さらに、子供が成長し家から独立したり、自分自身が、あるいは配偶者が定年を迎えるなど、家庭や社会においても大きな変化が生じやすくなり、心理的にも不安定な状況となります。この身体的、心理的、社会的変化が人にストレスを与え、さらに閉じこもりや精神疾患を発症する原因となることもあります。このように、「年を重ねる」ということがマイナスな印象を与えてしまうこともあります。

 アメリカの心理学者のエルクソンは、年を重ねて向かえる時期、すなわち老年期について、「自分の人生を肯定的に受け入れることができれば、心理面で安定が得られ、円熟や平安な境地が達成される」と説明しています。人は生涯成長していくものであり、年を重ねた老年者も同様に成長し続けます。老年者は何か問題が発生したとしても、今まで得た知恵や経験でうまく対応して、自らの生活を楽しむことや新たな自分に出会ことも可能にします。実際に、老年者になっても生き生きと生活を楽しんでいる方も多いです。また、「子供が独立し、手がかからなくなったので、前からやりたかった○○にチャレンジしたい」という人や「この仕事が好きなので、体力があるうちは続けていきたい」という話も耳にします。年を重ねることで、身体的な機能の低下による様々な症状や健康障害が生じてきますが、「人が生涯成長する」ということを生かして、自分でどのように暮らしていきたいのかを自由に考え、チャレンジしている姿はとても素敵だと思います。

 「人生60年時代」と言われていた時代から、現在の平均寿命は男女とも80歳を越え、単純に計算しても定年後の生活は約20年続きます。この20年を、「自分で意思決定し、行動できる時間を持つことができる」時期であるとプラスに捉え、残っている時間を自由に使い、楽しい人生を送っていきたいものです。きっと、年を重ねて得たものは、自分にとって最も大切な宝物になると思います。(2021年11月14日岐阜新聞掲載)