岐聖大通信Vol24

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?i n t e r v i e w外国語学部自由研究foreignlanguageアジア諸国からの移民によって綴られるアメリカ文学。その中で河原﨑先生が注目するのが、フィリピン系の文学です。文学から祖国に対する作家の思いをひも解く....

?i n t e r v i e w外国語学部自由研究foreignlanguageアジア諸国からの移民によって綴られるアメリカ文学。その中で河原﨑先生が注目するのが、フィリピン系の文学です。文学から祖国に対する作家の思いをひも解く先生のお話からは私たち日本人にもつながる問題の数々が見えてきます。祖国への思い、問題意識が詰まった移民の国・アメリカの文学。ご存じのとおり、アメリカは「人種のるつぼ」と呼ばれるほど、さまざまな国から移民を受け入れている国です。文学というのは、フィクションではあるけれども、随所に作者の生い立ちや社会に対する主張が滲み出ているもの。その点、それぞれの祖国に不満を持ち、新天地を求めて集まってきた人々が生み出した文学は、とてもパワフルなんですね。ちょうど私がアメリカの大学へ入学した際、アメリカ文学の世界では「マイノリティの人々による文学をもっと研究しよう」という運動が起こっていて、その中で私はアジア系の文学を研究し始めました。アジア諸国は歴史的に戦争で日本の支配を受けた国が多く、その影響を強く受けています。特にアメリカに移民したアジア系の人々は、文学の中で日本の植民地支配を頻繁に描いているんです。つまり、文学を通じてアメリカ経由で日本を非難しているんですね。こうした文学が多数ある事実を、私たちが知らないわけにはいかない。他国の文学を学ぶことが、実は日本を知ることにもつながっていたんです。今アメリカで最も元気な民族フィリピン系文学に関心。さまざまなアジア系文学を研究するうちに、私が最も興味を持ったのが、フィリピン系文学でした。おそらくフィリピン系に特化して研究をしているのは、日本で私くらいでしょうか(笑)。実は、フィリピンは世界でも非常に多くの移民を出している国。現在、アメリカ国内で最も急増しているマイノリティと言われています。その理由は、自国の産業が乏しく、雇用が少ないこと。教育はとても発展しているのに、大学を卒業しても就職の受け皿がないんです。とりわけ多いのが、女性の移民。フィリピンはカトリックの国なので、基本的には女性蔑視の傾向が強く見られます。中でも高学歴の女性は、一層受け入れられにくい。そのため、女性でも知識があれば高い地位を得られるアメリカへ移住を希望する人は後を絶ちません。そういった女性がアメリカで活躍し、強い問題意識を持って文学の中に祖国を描いている。このような文学には、とても力強さを感じます。オリエンタルステレオタイプとアジア系ジェンダー問題。先程も女性の話が出ましたが、文学を分析していると、どの社会にも未だジェンダー問題が非常に根強くあることを痛感します。特にアジア系の女性に対して、アメリカの男性は「従順」で「おとなしく」、「男を立ててくれる」などのイメージを強く抱いており、これは〝オリエンタルステレオタイプ?と呼ばれるものです。実際私も渡米した時、無口で物静かな女性だと思われ、「話をするとイメージが全然違う」と言われた経験があります(笑)。こうした偏見が日本人を含むアジア系女性との安易な結婚、そして離婚という問題を引き起こしているケースも少なくないのです。先に述べたように、作家の問題意識が強ければ強いほど、文学に深く反映されるもの。ですから近年、ジェンダー問題を抱える女性の中からすばらしい才筆を振るう作家が増え、数多くの世界的文学賞に輝いています。ジェンダー問題は、女性たちの文学を読み解くためにも大切な研究領域なのです。外国語学部教授かわらさきこ河原﨑やす子完全なフィクションはない。文学の中に込められている作家の歴史や思いを読むのです。07