岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞真学塾 短期大学部⑮ 藤田哲也

家族のかたち 〜親子や兄弟姉妹などの関係を超えて~

岐阜聖徳学園大学短期大学部専任講師 藤田 哲也

 親子や兄弟姉妹など、血のつながりを基本として作られた関係を「血縁関係」と言います。そして、婚姻などによってできた関係を「家族」や「親族」と言います。皆さんは、「血縁関係」と聞いて、「家族」や「親戚」をイメージするのではないでしょうか。しかし、「血縁関係」はなくても、一緒に暮らしている人がたくさんいます。

 例えば、様々な事情により、家族と一緒に暮らすことができない子どもは、児童福祉施設等で生活します。その施設は、家庭のような環境になるよう整備され、「血縁関係」はないものの、大人が子どもの成長を支え、あらゆるサポートをするようになっています。

 その児童福祉施設等で生活した経験を持つ女性が、結婚しました。

 本来、結婚は、「血縁関係」のある「家族」や「親戚」が集まり祝うものです。しかし、女性には、「家族」や「親戚」がいないため、それらが参列し、祝福することはありません。そこで、女性を支えてきた児童福祉施設等の職員や、高校卒業まで共に生活していた仲間が全国から集まり、結婚式に参列しました。結婚式では、女性を支えてきた多くのメッセージや動画が流され、あたたかな雰囲気につつまれました。

 そして、結婚式の最後に女性が読んだ手紙には、「命を授けてもらった人と育ててもらった人は違うけれど、どちらも大切な家族です。今、私が幸せになのは、ふたつの家族のおかげです。本当にありがとう。」と綴られていました。

 私は、彼女の言葉から、「血縁関係」を超えた強いつながりを感じました。

 「血縁関係」は大切なことかもしれません。しかし、血はつながっていなくても、人ひとりの人生に想いをはせ、生活を共にし、苦楽を分かち合う時間が長ければ長いほど、「家族」以上の強いつながりが生まれてくるのではないかと考えました。

 様々な「家族のかたち」がある今日、周りの人たちと「家族のかたち」について考えてみるのも良いのではないでしょうか。(2022年5月22日岐阜新聞掲載)