和38号
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日本人は英語が苦手?能力はあれど自信がない学生たちの現状現状の能力を引き出し日本人の特性に合わせたアプローチが大切社会の変化に対応できる若者を育てるため、教育もリフレッシュをルールではなくツールを身につけるPIIICKUP NTERVEW|1|教 員 私は16歳の時に観たテレビで、日常的な日本の文化や、漢字の成り立ちなどに感動を覚え、日本に興味を持ちました。そして大学で写真の勉強を始め、かねてより希望していた日本に留学。卒業後は再び来日し、カメラマンとして経験を積むうち、機会を得て専門学校の講師を務めることになり、教育にやりがいを見出しました。現在は、英語コミュニケーションなどの授業を受け持ちながら、学習における視覚芸術の利用について研究しています。 一般的に日本人は英語に対して苦手意識を持っていると言われます。私が見る限り、受験を突破して入学してきた学生たちは、文法は理解しているし、読み書きも充分。リスニングも問題はありません。しかし、試験に向けた厳しい暗記学習によって、頭が固くなり、自信を失ってしまっている……。それはとても残念なことです。 私の授業では、教科書は使いません。ある時は、課題のテーマに映画を選び、各々で監督や作品の歴史的背景などを調べ、成果を持ち寄って教室でブレーンストーミングをします。またある時は、旅に行ったと仮定して、白紙の絵葉書に風景のイラストを描き、裏に英語でメッセージを書いてみます。 その根底にあるのは、英語はあくまでツールであり、コミュニケーションの手段であるという認識。例えば「飲み物が飲みたい」ということを伝える際、人それぞれで言い方が変わるように、日常会話に正解はありません。大切なのは、英語をどう使いたいかということ。だから私は、新たに「英語」を詰め込むのではなく、学生たちの中にすでにあるものを引き出すようなアプローチを心がけています。 そしてまた、日本人は日頃から絵的ともいえる漢字を使っているためか、欧米人と比べて器用で芸術的なことが得意です。加えて、人間の脳は言語機能を司る部分と、感性や芸術を司る部分が異なるため、両方を使うことで脳はより活性化します。そういった観点から、日本人の学習・理解の出発点として、ビジュアルを活用したアプローチがとても有効だと考えています。 日本の伝統文化である茶道や華道などは、長い歴史の中で洗練され、今のような様式美を築いてきました。一方で、その様式美ゆえに敷居が高くなってしまっているのもまた事実。本来はもっと自由な世界だったはずです。日本における英語学習でも、同様のことが起こっていると感じています。 ルールや慣習は良い面もありますが、それに縛られてしまうと窮屈にもなります。私の目標は「教育」の文字通り、人を教え育てること。時代と共に変わっていく社会。その変化に対応できる若者を育てるため、教育も徐々にリフレッシュしていく必要があるのかもしれません。私が博士号を取得した英国のクイーンズ大学ベルファスト校は、約30年にわたる武力紛争があった中心地に位置しています。その傷跡は深く爪痕を残し、発展したビル街からわずかの距離に、今もなお生活もままならない人々が暮らすエリアが広がっています。その住民に少しでも希望を持ってもらいたいと始めたのが「PROJECT E-MA(プロジェクト絵馬)」。絵馬は前向きな思いを託すもの。教育が受けられず字が書けない人も多いため、絵馬にイラストで願い事を描いてもらい、しばらく壁に掛けた後、焚き上げました。このプロジェクトは今も地域住民主体で続いています。GIFU SHOTOKU GAKUEN 42外国語学部専任講師Dr. Andrew WOOLLOCK(ウルック・アンドリュー)→イギリス出身。大学で写真を学び、来日後はカメラマンとして活躍。教育者に転身後、芸術を取り入れた英語教育を日本で展開。2013年より、紛争の傷跡が残る英国ベルファストで、人々の希望を願う「PROJECT E-MA(プロジェクト絵馬)」を開催する。平成30年4月〜現職。

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