岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾54 教育学部 英語専修 加藤拓由  

『もう,英語は勉強しなくてもいいの?』

岐阜聖徳学園大学准教授 英語専修 加藤(かとう) (ひろ)(ゆき)

 近年,AI(artificial intelligence)つまり,人工知能がすさまじい勢いで進歩しています。2017年,チェスや将棋より手数が多く,勝つのが難しいとされる囲碁の世界で,AIは人間の能力を超えました。そして現在は,AI同士でチェスや囲碁の勝負を繰り返しながら,AIがどんどん自分の能力を進化させる,「ディープ・ラーニング」の研究が進んでいるようです。

 ところで,AIの進歩は言語の翻訳の世界でも日進月歩で進んでいます。手のひらサイズで,手軽にどこにでも持ち運べる自動翻訳機を見たことがある人も多いでしょう。また,高校生のみなさんが日頃よく利用する,スマートフォンのサイトでも,簡単に自動翻訳を体験することができます。試しに,次のような日本語を英語に翻訳してみました。

 どうですか?翻訳された英文を,そのまま外国人に見せても,十分通じるレベルの正確さで翻訳をしていますね。それでは,自動翻訳機やスマートフォンがあれば,私たちは,もう外国語を勉強する必要はないのでしょうか?ここで,もう一つ,次のような日本語を翻訳してみましょう。

 今度は,誰が見ても「あれっ?」と思うようなおかしな英語が出てきてしまいました。「僕は,ハンバーガーでいいよ」というのは,私たちが聞けば誰でも意味が分かる簡単な日本語です。しかし,自動翻訳を使う時には,AIも意味が理解しやすいよう,「僕は,ハンバーガーが欲しいです。」のような,AIが理解しやすい日本語してから入力する必要があります。また,私たちも,AIによって翻訳された英語が正しいかどうか判断できる程度の英語力も必要なのです。

 最初に述べた,AIが自分自身で学習を繰り返して,まるで外国語の勉強をするようなディープ・ラーニングの技術がさらに進めば,もしかすると外国語を勉強する必要がなくなる時代が来るのかも知れません。しかし,何か悲しいことがあった時,相手の気持ちに配慮し,相手が笑顔になるような温かい言葉がけができるのは,生身の人間の能力だけだと思うのは,私だけでしょうか?さあ,この続きは,ぜひ皆さん自身で学んでみてください。

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