岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾56 教育学部 学校心理専修 吉田琢哉  

人と比べてしまう心

岐阜聖徳学園大学教育学部准教授 学校心理専修 吉田 琢哉

 皆さんは,自分にどんな特徴があると思いますか?たとえば「私は」で始まる文章をいくつか書いてくださいと言われたら,どんな文章が思い浮かぶでしょうか。「私は明るい性格です」「私はちょっとルーズなところがあります」「私は学生です」「私は背が高いほうです」など,自分の内面や外見上の特徴が思い浮かべやすいかと思います。こうした自分自身のイメージは,他者と比較することで浮かび上がってくるという性質があります。

 私たちはつい,ひとと自分を比べがちです。皆さんが自分と比べるのは,どんな相手でしょう。心理学では自分よりすぐれた人と比較することを上方比較,その反対を下方比較と呼びます。どちらの比較にも,自分の気持ちを整えるうえでのメリットがあります。上方比較は,自分に余裕があるときには「あの人のようになりたい」といったように,自分を向上させるモチベーションとなります。下方比較は,自分が落ち込んでいるときには「あの人より私はまだ恵まれている」といったように,自分をなぐさめる役割を果たします。ですが,状況と比較の仕方の組み合わせを変えてみるとどうでしょう。自分に余裕があるときに下方比較を,落ち込んでいるときに上方比較をした場合は...。想像してみると,どのような比べ方がよいのかは状況によって変わってくるのがわかりますね。

人との比較には危険もつきまといます。皆さんは「あこがれ」と「ねたみ」の違いを説明できますか?前者はポジティブな感情,後者はネガティブな感情ですよね。ですがどちらの感情も,自分が持っていない価値あるものを持っている他者に対して抱く感情であることに違いはありません。何が違うかと言えば,それは言わば心の持ちようです。「あこがれ」は,先ほど説明した上方比較と関係しているという研究があります。つまり「あこがれ」とは,自分を相手の位置まで高めようとする心がまえを表しています。

今は,新型コロナウイルスの影響による自粛生活より前の「日常」にあこがれる日々を過ごしている人も多いことと思います。学校に通える日常が戻ったら,どうかお互いに高め合える仲間づくりにいそしんでください。

関連ファイル