岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾57 教育学部 石原一彦  

「一人1台のPC」GIGAスクール構想とその課題

岐阜聖徳学園大学教育学部教授 情報教育研究センター長 石原一彦

 社会の情報化が進展し、インターネットは年を追うごとに重要になってきました。今や社会にとって不可欠な通信基盤となっています。また、持ち運び可能なスマートフォンやタブレットが普及し、時間や場所に制約されることなく、いつでもどこでも誰でもがインターネットにアクセスできるようになりました。このようなハイテク先進国を標榜してきた我が国の中で、情報化の波に取り残された分野があります。それは「教育」です。我が国の教育の情報化は、先進国の中で一周遅れのレベルと揶揄されています。

 そんな中、起死回生の一手を政府は繰り出しました。昨年の12月に「全国の小中学生一人に1台のコンピュータ(PC)と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する」とした「GIGAスクール」構想を打ち出したのです。持ち運びができるPCを高速大容量の無線ネットワークに接続して利用します。計画によると2023年度末には、多くの小中学校で無線ネットワークにつながった一人一台のPC環境が整い、子どもたちはネット上の多様な教材を利用できるようになります。これは、小学校の新しい学習指導要領で必修となったプログラミング教育を推進するものと考えられています。またウイルスの蔓延によって休校になり在宅学習を強いられた場合にも、一人1台の環境整備が役立つでしょう。世界から見て立ち遅れていた我が国の「教育の情報化」が、「GIGAスクール」構想で一気に前進するものと期待できます。

 ところで、インターネットは便利で快適な生活を実現するための大切な道具ですが、一歩使い方を誤ると、炎上だけでなく、詐欺や窃盗、人権侵害や誘拐など財産や生命の危機にまで影響が及ぶことがあります。しかも、行き交う情報の多くは、大人も子どもも区別されることがありません。ネット空間での情報のやりとりは相手の顔が見えない分、遠慮や気遣いが取り除かれ、悪意や敵意が容赦なく投げつけられる場合も少なくないのです。ネットを安全に使うためには、情報社会の仕組みを知り、情報社会の特性がいかに人の生活と緊密に関わり合っているのかを知ることが大切です。

 「GIGAスクール」構想によって、一人1台の環境で子どもたちがネットワークに参加するには、一人ひとりがネットワークの構成員としての義務や責任を果たし、情報安全に対する最低限のスキルを身につける必要があるのです。このため、子どもたちがインターネットと出会う早い時期に、ネットワーク参加者に求められる知識や技能を学年ごとに段階を追って指導する必要があります。コインに表と裏があるように、プログラミング教育を必修化するのであれば、情報安全教育もまた必修化する必要があるでしょう。

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