岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾68 教育学部 教職担当 龍崎 忠 

自分自身に向けてたっぷりと愛情をそそぐ

岐阜聖徳学園大学教育学部教授 龍崎 忠

 僕が学んでいる心理学者の1人に、アルフレッド・アドラーという人がいます。人間同士はだれもが対等であるべきだ、という考え方が素敵だなと思っています。彼は心理学の歴史のなかでは人間性心理学という流派に位置づけられています。このグループには他にアブラハム・マズローがいて、人間には5つの欲求段階があるという説で知られます。5つのうち、最高次にあるのが自己実現の欲求だと言っています。みなさんも高校生になって、公民科の授業のなかで勉強することになるでしょう。

 この自己実現の欲求とは、自分の能力を最大限に発揮し充実した人生を送りたいとする欲求だと言えます。もう少し言い方を変えると、「自分らしく生きる」ということになるでしょうか...、かえって難しくなったかもしれません。さて、自分らしく、というのはどういうことでしょうか。

 みなさんも「もっと中学生らしくしなさい!」などと言われたことがあるのではないでしょうか。おうちの人から言われることが多いでしょうが、学校や塾の先生に言われたかもしれませんね。僕も30年以上前に中学生だったころ、とくに先生たちから半ば叱られながらそんなふうに言われたことを今も思い出します。「中学生らしく!」というのは、「勉強しなさい!」と併せて、10代のみなさんが大人たちから言われる(そして時にムカッとくる)"ツートップ"に違いありません。

 きっとアドラーやマズローが先生なら、中学生として生きる自分自身をもっと好きになりましょう、いま以上に大切にしていいんですよ、とみなさんに向けて優しく言うだろうなと思います。中学生であるのはもちろん今のうちだけでしょうが、高校生や大学生、そして大人になっても人生は続いていきます。こんな自分でいいんだろうかと不安になったり、友だちやきょうだいと自分を比べて少しみじめな気持ちになったりするときがあるかもしれません。でもそんな自分だからこそ嫌いにならずにそういう気持ちもまるごと受け止めてください。だれもが自分自身の人生の主人公であるからです。

 このようなことはセルフ・コンパッションという心理学の研究でも注目されています。自分自身のことを一番大切にできるのは、自分自身に他なりません。「自分は自分でいいんだ」という自分自身への愛情を深めることを忘れずにいたいですね。

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