岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾65 教育学部 芳賀高洋 

ブリコラージュ 『野生の思考』のススメ

岐阜聖徳学園大学教育学部准教授 芳賀高洋

  みなさんは長期休校中にどのような生活をしていましたか?

 YouTubeを見たり、問題集を解いたり、ゲームをしたり、ひたすら消費・浪費する生活でしたか?それとも、部屋の中でできる自分なりの探究活動を動画にまとめてYouTubeに投稿した人もいるでしょうか?

 冷蔵庫に入っていた余りものを寄せ集め、試行錯誤し、独創的な新しい料理を生みだす。代々保管してきた呉服の端切れで新デザインのバッグを作りだす。過去に別の目的で作っておいたユーザ定義関数など多数のコンポーネントを改変したり、組み合わせたりして、これまでになかったコンピュータ・プログラムを作る。

 このように、目の前にある、ありあわせの素材や部品を寄せ集め、それらの「本来の用途」や「習慣」、「偏見」に囚われることなく試行錯誤を繰り返し、新しい価値や構造を創造していく様を、フランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースは「ブリコラージュ(bricolage)」と呼びました。英語ではDIY(Do It Yourself)やtinkering(ティンカリング)、日本語で「やっつけ仕事」や「日曜大工」と訳されます。美濃の方言ならば「なぶる」でしょか。

 日本語の「やっつけ仕事」の語感のとおり、ブリコラージュの語源はけっして良い意味ではなく、むしろ、「もてあそび、いじくりまわす」とか、「いいかげんで雑な仕事」といったニュアンスがあります。

 しかし、レヴィ=ストロースは、こうしたブリコラージュこそ、太古の昔から人類が文化を発展させてきた普遍的な知のあり方-『野生の思考』であると学説しました。

 現代は状況が刻々と複雑化、拡張化する「予測不能な社会」であると言われます。学校の先生やテキストから知識や答えを与えられるだけでは種々の困難に対処できない世の中です。自ら課題を探り、新しい価値や構造を創造していく力が求められます。

 新しいものを創りだすことは決して難しくありません。

 過去の世界中の人類が日常的にしてきたように、ブリコラージュ『野生の思考』をすればいいのです。自分の半径5メートル以内にあるものをその習慣や偏見に囚われず「なぶり」ながら試行錯誤していくことで新しいものを生み出せることは学説上のみならず、人類史上の事実です。

 これから先、再び休校になってもならなくても、みなさんには過去の人類を見習って日常的なブリコラージュ『野生の思考』に取り組んでみることをおススメします。

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