岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾66 教育学部 学校心理専修 後藤綾文   

私たちは他者や物事を正しく見ることができているのか?

岐阜聖徳学園大学教育学部専任講師 学校心理専修 後藤綾文

 「あの人はやっぱり陽キャだよね」「あのクラスの子たちは、元気なタイプが多いよね」

 こんな会話をしたことのある人は多いのではないでしょうか。

 だって、「あの人は、学校でいつも友だちとうるさく喋っているし。部活のキャプテンで頑張っている。」「あのクラスは運動会でも一番盛り上がっていたクラスだから。」と、あなたがそう思う理由を言えるかもしれません。あなたは実際に、「あの人」が陽キャであると思われる場面や「あのクラスの子たち」が元気にしている場面を見てきたのだと思いますし、あなたの思う理由が間違っているとは言いません。

 しかし、例えば「あの人」が落ち込んで一人で下校しているときだって必ずあるはずです。「あのクラス」が疲れて静かにしているときだって必ずあるはずです。あなたは「あの人」「あのクラス」を1年間365日観察しましたか?ここまで言ってしまうと冗談にはなりますが、私たちは他者や物事について、自分の思いこんだタイプに自然にあてはめてしまっていることがあります。たとえ「あの人」が落ち込んで一人で下校しているときを見たことがあっても、自分の考えに一致しないので、自分の記憶に残りにくいのです。このように、自分の考えが正しいことを示す情報を集めてしまい、自分の考えが正しくないことを示す情報を無視したり集めようとしたりしない傾向を心理学では「確証バイアス」といいます。

 この「確証バイアス」は、私たちが生きていくために必要な心理的傾向でもあります。私たちは、自分の考えは正しい・自分のしたことは正しいと思い、安心したいのです。一方で、この心理的傾向は、他者や物事を一面的にしか見ることをできなくもさせてしまいます。もちろん、すべての情報を集めようとすると疲れるし、とても時間が必要になるので難しいです。ただ、そのように固まった見方で他者や物事を見る傾向が人間にはあることを頭に置いておくことも重要です。そうすれば「この子ってこんなところがあるんだな」「思っていたより、面白い子だな」と他者の新しい側面を見つけたり、今まで避けてきたことに対しても取り組んでみることができるのではないでしょうか。

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