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第23号 平成21年12月発行

「嫉妬の心」

城福 雅伸

嫉妬というのは仏教では悪い心の働きの一つとし嫉といいます。仏教の哲学書には「自分が名誉や利益などを求めるために他の人がそれらを得て繁栄しているこ とを見聞することに耐えられず、ねたみ、そねみ憎む心で、不嫉を妨害して心を憂いさせる心の働きである」と書かれています。
嫉妬といいますと嫉妬深い人がいて、そういう人が嫉妬をするのだろうと私たちは考えがちです。実際に世の中では「あの人は嫉妬深い」ということが言われ ますから、嫉妬の心をもった人がいる一方で、嫉妬心がない人がいるように思われています。また一般に嫉妬は愛情問題で語ることが多いですから愛情問題以外 に嫉妬があるとはあまり認識されていないかもしれません。しかし誰にでも嫉妬はありまた愛情問題以外にも嫉妬は起こります。
他者がお金や地位や名誉を得ることに大変に嫉妬をする人もいます。この嫉妬心のために他者がお金や地位や名誉を得ることに我慢ならず妨害するなどしま す。これが社会が混乱する一因となります。その場合も「私は嫉妬のあまり我慢がならないから妨害する」とはいわず、いかにも正当なことを言って他者を妨害 しますからより混乱が深まることになります。
また人間はお金や地位や名誉以外のものにも嫉妬します。例えば自分の絵が高い芸術性で評価されることをめざし努力し、お金や地位や名誉に興味がない画家 がいるとします。その画家は他の画家や他人がお金や地位や名誉を得ても嫉妬はしません。そのためこの画家は嫉妬をしない心のきれいな淡泊な人であるという 評価を得ることがあります。ではこの画家は本当に嫉妬の無い人なのでしょうか?
そうではありません。もし他の画家がその画家が得たいと思っている芸術面での高い評価を得た場合、大変に嫉妬をします。
こういったことが先に挙げました仏教の哲学書の「自分が名誉や利益などを求めるために他の人がそれらを得て繁栄していることを見聞することに耐えられ ず」ということなのです。つまり自分が何かを求めている、何かが欲しいと思っている人は、他者がそれを得れば嫉妬をし憎悪まで感じるということなのです。 何かを求めていない人、何かが欲しいと思ってない人はありませんから、すべての人間がいつも何らかの嫉妬心をもって生きているということになります。
スーパーの安売りに行き目指していた安い商品を他者が先にとって自分がとれなかった場合、嫉妬をします。おしゃれのセンスの良さに気を使っている人は、 他者がおしゃれを評価されると嫉妬します。人格が円満であると自負し評価されている人は他者が人格が円満であると評価されると嫉妬します。極端な場合、あ の人は変人だと言われてその評価に価値を置き満足に思っている人が他者が自分より変人であるという評価を受ければそのより変人といわれた人に嫉妬するとい うことなのです。ですから社会には無量の嫉妬が飛び交っているといっていいのです。
むろんこれら嫉妬心をあからさまに表面には出す人はあまりいませんが心中には嫉妬心が存在していることが多く、しかもその人が行動を起こす動機となることが多いので社会などが混乱する一因となっています。