岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 外国語学部⑯ 濱中 誠

岐阜の方言はハイブリッド

岐阜聖徳学園大学外国語学部専任講師 濱中誠

 突然ですが、みなさんはネギの緑のところと白いところ、どちらが好きですか。

 私は関東出身なので、白いところが好きです。緑のところは食べないところと思って育ちました。ところが、関西に引っ越した時、スーパーで売られているネギを見て驚きました。白いところがほとんどないのです。このようにネギは、好んで食べられる部分が地方によって違います。だいたい東日本は白ネギ文化、西日本は青ネギ文化と言えるでしょう。それでは、私たちの住む岐阜県はどうでしょうか。

 私は岐阜県に引っ越して来てはじめてスーパーで買い物をしたとき、また驚きました。なぜなら、青果コーナーに白ネギも青ネギも両方並べられていたからです。さすが、東日本と西日本の中間に位置する岐阜県だと感心しました。

 このような東と西の違いは、食物だけではなく、ことばの世界にも見出されます。例えば、「人がいる(東)人がおる(西)」「行かない(東)行かん(西)」などの違いがよく知られています。みなさんはどちらを使っていますか。

 土地土地のことばづかいにはいろいろな違いがあって、それを「方言」と呼んでいることは、みなさんもよく知っていると思います。岐阜県の方言は、スーパーのネギの場合とそっくりなのは面白いですね。どういうことかというと、例えば単語のアクセントは、東京のアクセントとほとんど変わりません。これは、東日本の方言の特色と言えます。これに対して、文法事象には「行かん」のような西日本の方言の特色も見られます。すなわち、岐阜県の方言には、東日本と西日本の両方の特色があるのです。まさに、ハイブリッドですね。

 ところで、東日本と西日本の方言の境界はどこにあるのでしょうか。これについては、明治時代から研究者によって詳しく調べられています。よく言われるのが、富山県・岐阜県・愛知県の東側の県境に沿って線を引き、その線で東西を分けるというものです。中部地方は地形が複雑です。この県境付近には、高い山々などの地理的障害があり、このために人と人との交流がとざされ、方言や文化に東西の対立が生じたようです。

 このごろは、新型コロナウイルス感染症のために、ステイホームが叫ばれていますね。こんなときだからこそ、お父さん・お母さんや、おじいさん・おばあさんに生まれ育った土地の方言について尋ねてみてください。教科書には書かれていない、自分を育んでくれた活きたことばの勉強ができると思います。(2021.2.21岐阜新聞掲載)

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