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第4号 平成19年7月発行

「学ぶこと」

蜷川 祥美

私は、中学生の時、担任の先生から、「勉強とは、人類のさまざまな文化を学ぶことです」との言葉をいただきました。国語辞典によると、「文化」には「人間が 学習によって社会から習得した生活の仕方の総称」(『広辞苑』第2版)という意味があり、「学ぶ」には「まねてする」、「習って行う」(『広辞苑』第2 版)という意味があるそうです。そうすると、勉強とは、これまで人間が社会を作り上げてきた過程において培ってきたさまざまな生活の仕方を教わり、まねて みることとはいえないでしょうか?
本学には、宗教学という講義がありますが、そこで、建学の精神である仏教の精神や文化を学ばれていると思います。

仏教とは、理想の存在である仏となることを目指す教えです。仏とは大いなる智慧(ちえ)のこころと慈悲(じひ)のこころをもつものです。智慧とは、ある がままに真実を見通すこころのことで、慈悲とは、あらゆる命あるものの苦しみを除き楽を与えるこころのことです。こうしたこころをもつ仏は、私たちの苦し みを見通し、同じこころとなって、あわれみ、いとおしんでくださるだけではなく、苦しみの現実をはっきりと知らせて、それを乗り越えていけるようにとはぐ くんでくださるのだとも説かれます。
小学生の頃、運動会の後かたづけで、テントをたたむ際、折りたたみ式の柱に指をはさんで痛い思いをしたことがあります。その様子を見ていた先生が、「痛 いね」とご自身が痛みを感じているかのような顔をして心配して、たたみ方の注意点まで指導してくださいました。痛いのは私なのに、私と同じこころになって くださっていると思うだけで、安心感を覚え、教えていただいた方法で、以降はうまく作業をこなすことができました。このようなやさしいこころをもつ人にな りたいなと思いました。

阿弥陀仏を信じられていた中国の善導大師(ぜんどうだいし)に
「仏の大悲心を学して(ぶつのだいひしんをがくして)」(『帰三宝偈(きさんぽうげ)』)
という言葉があります。仏教徒は、仏の大いなる慈悲のこころをまねてみることが大切であるということでしょう。長い間、多くの人々によって受け継がれてき た仏教精神の理想とするこころ、つまり慈悲のこころを教わってまねてみる。口でいうのは簡単ですが、あらゆる命に対してそれを行うことはなかなか難しいこ とです。しかし、それを実現しようと生涯をかけて努力される方がいらっしゃいます。また、仏のこころがあらゆる命あるものをお救いくださるなら、そのここ ろはわたしにも届いているはずです。大いなるこころにつつまれて、自身を省みつつ理想に向かって力強く生き抜く方もいらっしゃいます。 仏教徒とは、こう したことを学ぶ人々なのです。
「このような文化、このような生き方もあるのだ」と学んでいただければうれしく思います。