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第12号 平成20年3月発行

「一瞬のこころ」

蜷川 祥美

「抑三大僧祗ノ (そもそもさんだいそうぎの) 修行ノ久シサハ、アヂキナク候ヘ共 (そうらへども) 、覚リノ前ニハ是ヲ一刹那ニオサム (さとりのまえにはこれをいっせつなにおさむ) 。」
これは、鎌倉時代の法相宗(ほっそうしゅう)の学匠良遍(りょへん)(1194~1252)の著した『法相二巻抄』(ほっそうにかんしょう) の言葉です。
法相宗においては、覚りを得るため三大阿僧祗劫(さんだいあそうぎこう) という気の遠くなるような修行期間が必要であると説かれています。修行を始め ようと志す者が聞けば、「とうてい私には覚りを開くことなどできないだろう」と思ってしまうかもしれません。しかし、いざ覚りを開く直前になってみれば、 長い修行期間もほんの一瞬に摂まってしまうというのです。
3月は卒業シーズンです。大学や短期大学部に入学した当初は、「あと4年間、もしくは2年や3年間も勉強しなければいけないのか、長いなあ」などと思っ た方もいらっしゃるかもしれません。しかし、いざ卒業式を迎える日には、「あっという間だったな」という気持ちではないでしょうか。また、死を覚悟した人 は、一瞬の間に走馬燈のように過去をの出来事を思い出すことがあるようです。これは、何十年もの長い人生も、ほんの一瞬のこころのなかに摂めることができ るということでしょう。
これを、「どんなに苦労しても一瞬の出来事なのだからむなしい」などと考えるなら、あまり良い言葉ではないかもしれません。しかし、どんなに困難で実現 できそうもなかったことでも、それが実現する時には、長くつらかった経験がほんの一瞬の夢のように思え、それまでの苦労が吹き飛ぶのだということを示して いる言葉だとも考えられましょう。
また、どんなにつらく苦しくとも、その経験が今の一瞬のこころに摂めつくされていると考えるなら、現在の自分はこれまでのいろいろな経験が身に付いた、ひとまわり大きな人となることができたのだともいえるのではないでしょうか。
大学・短大時代は、中学・高校と異なり、自分で考え、自分の責任で行動することを身に付けることのできた期間であったはずです。とても大変だったと思い ますが、その期間の苦労のすべてが、皆さんのこころに大きな経験として備わり、現在のあなた方を形作っているのです。自信をもって、これからの人生を歩ん でいってほしいと思います。