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第35号 平成24年8月・9月発行

まず自国の文化を知りましょう

城福雅伸

北関東東北大震災は日本史上でも最も不幸な出来事の一つであったといえましょう。そのような大変な中にもかかわらず被災した人々が落ち着いた行動をとり助け合ったことに世界は驚嘆の声を上げたことは知られています。これは日本に強靱な精神文化が根付いている証ともいえましょう。
 最近、仏教国(ブータン)を紹介する番組がありました。その国を池上彰氏が訪問し紹介するもので非常にいい番組だと思いました。欲をいえばもう一押しあればと思ったところがありました。
 例えばその仏教国の少女達がすべての生きとし生けるもののためにと仏様にお祈りを捧げているという話がありました。それを聞いた池上彰氏もスタジオの出演者も皆、自分のためではなくて・・・と感動されていました。その感動は池上彰氏や出演者がその少女達の精神を感動する精神、つまり自分のみの経済的な利益や権威、権勢、社会的地位の獲得に価値をおきがちな人々と一線を画した優れた感性や精神をお持ちであることを示すものであり、そのことがよく出ていたことも、番組をよりよいものにしていたと思います。
 欲をいいますと日本でもこの少女達の精神に通じる精神が根付いており、その精神の発露は形を変えて表明されていることを一言付け加えられたならば、その国と日本の根底に流れる精神文化、あの北関東東北大震災や阪神大震災の中で人々が混乱することなく他人を思いやり助け合った精神の源の一つを私たちが知ることができたのではないかと思います。
 宗派によって若干の文面及び解釈は異なるとは思いますが、日本では法要や経典の読誦の最後に読誦される廻向文というものがあります。それは自分のみならず生きとし生けるものの往生や悟りを願うものです。決して自分の金儲けや立身出世、御利益を祈願するのではありません。自分と他者のことを願っているといえましょう。つまりこの仏教国の少女達の精神や姿勢と日本の精神、姿勢は通じるといえるのです。
 もし、日本もこの仏教国の少女達と通じる精神と姿勢を持ち、宗派によって若干の異なりはあるにせよ、おおよそ自分のみならず他者、生きとしいけるものへのことを願っています、知っていましたか、といえば番組はより深みがあるものとなったのではないかと思います。
 自分のみならず他者(生きとし生けるもの)も・・・というこの精神や姿勢が、非常な苦難や災難に自分が直面したその時でさえなお、自分のみが・・・というのではなく、むしろ互いに助け合い乗り越えて行こうとする、まさしく世界が評価する精神と姿勢を形成する一つの要素となっていると思います。
  日本人は一般的におしなべて他国や他文化をすばらしいとし、見習わなくてはならないとしがちです。むろん他国、他文化の優れた点を見いだすことは大切で、優れたものは取り入れたり学ぶべきでしょう。しかしすでに日本に存在する優れた自国の文化は知っておきそれを忘れず、さらに伸ばすことも必要だと思います。
 それを見いだすためには、やはり自国の文化を学ぶことが大切だと思うのです。