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第1号 平成19年4月発行

「視聴率合戦から学ぶこと」

譲 西賢

視聴率最優先の最近のテレビ放送に皆さんは、怖さを感じておられませんか。正月早々に、関西テレビが放映した『あるある大事典 2』の根拠ないない捏造(ねつぞう)番組もその一つです。私も1月は、納豆を50回かき混ぜ、20分経ってから食べさせられていました。納豆は好きで元々食べていましたが、ウソとわかって、20分待っていた自分がとてもみじめで腹立たしく思えました。最近になって、やっと捏造放映の実態調査報告や検証がなされていますが、関西テレビを捏造放映に踏み切らせたのは、視聴率最優先の価値観です。優勝劣敗(ゆうしょうれっぱい)や勝他(しょうた)は、人間の本能であり、「勝ちたい。負けまい」ゆえに人間は努力もしますが、間違いも犯します。

この価値観は、最近のバラエティ番組にも当てはまります。それのみならず、最近のバラエティ番組は、日本中を意識なき差別やいじめの加害者にさせている怖さがあるように思えます。それは、最近特に増えてきたクイズ形式のバラエティ番組に感じます。それらの多くは、無知のキャラを売りにするお笑いタレントを出演させ、それら無知なお笑いタレントが司会者や他の出演者から罵られ、バカにされることを売りにしている番組です。その無知さが視聴者の笑いを誘い、視聴率を稼いでいるのです。

これら番組での視聴者の笑いは、何を意味しているのでしょうか。「自分よりもバカで無知な人間がいた」という安心感と彼らを見下げ差別する気持ちが、笑いになっているのではないでしょうか。そして、視聴者の多くは、さわやかな気分を味わい、視聴率が上がるのです。無知なタレントを差別して笑い、さわやかさを感じることが、日常的に家族揃ってのお茶の間でなされているのです。視聴者は、知らないうちに意識なき差別・いじめの加害者になっているのです。優勝劣敗・勝他が本能の人間は、皆、このトリックにはまるのです。最近の学校のいじめの特徴の一つ「自覚なきいじめ」は、これらテレビの影響が大きいと思えます。いじめを笑いと勘違いする子どもたちも、最近は随分多いのです。視聴者を意識無きいじめの加害者にする視聴率合戦が、今、繰り広げられています。

親鸞聖人(しんらんしょうにん)は、「わが心の良くて殺さぬにはあらず。また、害せじと思うとも百人千人を殺すこともあるべし」と、縁によって生かされているわれらであると諭しておられます。私たちは、優勝劣敗・勝他の本能ゆえに、縁次第で差別を始めいかなる間違いも犯しかねないのです。ですから私たちは、「自分は、人を差別するから危ないぞ」と自覚するしかないのです。視聴率合戦のテレビ番組を通じて、私たち自身の優勝劣敗の心の危なさの自覚を共有することが大切なのではないでしょうか。