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第41号 平成26年4月発行

「無明業障のおそろしき病」

譲 西賢

4月になって春の温もりを満喫できる陽気になりました。今冬は、関東地方のように記録的な大雪に見舞われた地方もありましたが、この岐阜地域の寒さは厳しかったのですが、雪らしい雪はまったく降りませんでした。冬に雪がまったく降らないのは、とてもありがたかったのですが、素直に喜べないのが凡夫の私です。今冬雪用の高品質で高価なスタッドレスタイヤを新調しました。人気の新製品で1ヶ月ほど待って12月半ばに入手し、すぐにタイヤ交換して、3月半ばまでスタッドレスタイヤで走りました。人気で高品質のタイヤは、雪が積もれば威力を発揮したのでしょうが、雪がなければ、音はやかましくクッションと燃費は悪く、何もいいことがありません。ですから、雪の降らなかったことは嬉しいのですが、「雪が降ると思ったから、高価なスタッドレスタイヤを購入したのだから、少しは積もれよ」と不機嫌な気分の私です。雪用タイヤに交換していなければ、「雪よ、降るな」と願うのに、いざタイヤ交換をすると「雪よ降れ」に心が変わる私なのです。

先日こんなこともありました。愛知県の岡崎のあるお寺へ法話に行きました。距離は約100キロです。普段ですと高速道路を走って1時間半です。その日は日曜日でしたから、渋滞するに違いないと思い、40分ほど早く家を出ました。ところが、高速道路も一般道も全く渋滞はなく、予定より約1時間早く到着し、仕方なく近くの喫茶店に入って、コーヒーを飲んで時間調整しました。「どうして高速道路は、渋滞していなかったのだ」と私はとても腹立たしい思いでした。

冬に雪がまったく降らないことは、有難く嬉しいことです。道路の渋滞がなく予定より早く到着してコーヒーが飲めることはホッとすることです。飲んだコーヒーもホットでしたが・・・・。ところが、自分の判断や思い通りでないと嬉しくホッとするどころか、不機嫌で腹を立てるのが凡夫の私なのです。このように、自分の判断や思いを優先し、それが正しいと思い上がって、その通りにならないと腹を立てたり落ち込んだりすることを、蓮如上人は、善導大師の言葉を引用されて、「無明業障(むみょうごっしょう)のおそろしき病」と表現されました。『ご文章』2の13通と5の12通には、「光明の縁にあひたてまつらずは、無始よりこのかたの無明業障のおそろしき病のなおるということは、さらにもってあるべからざるものなり。」と同じ文章で諭されています。「人間が自分の判断は間違いないと思う心は、死ぬまで治らない」ということです。ですから、光明の縁である阿弥陀如来という(はたら)きが私たちに届いて、その判断の間違い気づかせてくれるということです。

 私が前述のように不機嫌になったり、腹を立てたことが、阿弥陀如来の用きなのです。私に気づくチャンスをくださったのです。「なぜ、不機嫌になり、腹を立てたのか」と問いを持つことによって、自分の無明業障に気づかせてくださったのです。無明業障を消すことはできなくても、気づいてそれに振り回されない生活はできます。気づくことによって、「自分は無明業障だから、判断や思いを優先し危ないぞ。」と自分を戒めることができるのです。

 自分の業績を過剰に自慢することも相手の失敗をついて責めることも、無明業障の人間が犯す過ちです。この過ちを犯して人間は、自分の無明業障に気づかせていただくのです。気づいた人間は、相手の失敗を責めるのではなく、「それは私も同じです」と相手を許すことができます。「倍返し」や「土下座」が流行した昨年。どうやら日本は、無明業障のおそろしき病が大流行しているように思えてなりません。この特効薬が阿弥陀如来という(はたら)きなのです。