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法話 第62号 令和元年4月・5月発行

亡くなった日は誕生日?

西川 正晃

 社会の便利さはとどまるところを知りません。何でもネットを"ポチ"すれば手に入る社会となってきました。私自身を振り返っても、最近は本屋に足を運んだ記憶があまりありません。PCの画面上で必要な本の名前を入力し、クリックすれば、ここにいながら日本での最安値の販売店を見つけ出し、注文することができます。注文すれば、24時間以内に手元に本が届く・・・、そんなことが日常となっている現実に気づかされます。人間の便利さを追求する姿はとどまることを知りません。とあるネット販売では、「法事・法要の読経初回35,000円で手配します。現金対応 クレジット決済OK」まで出現しているではありませんか。格安かどうかはわかりませんが、法事をするにしても、お坊さんまで"ポチ"できる社会になってきました。

 そもそも法事とは何のためにお勤めするのでしょうか。落語家でタレントの笑福亭鶴瓶さんの、お母さまの13回忌でのエピソードを、自身のラジオ番組で話されていました。

 法事も厳粛な雰囲気で進んでいきました。終わりの頃になると、ロウソクが小さくなってきました。『ロウソクが読経中に消えては大変』と思った鶴甁さんは、法事の施主であるお兄さんに、ロウソクの交換を促しました。ところが、ロウソクはご読経されている僧侶のすぐ前の引き出しの中にあり、取り出すことができません。鶴甁さんの何度かの催促に、ロウソクを引き出しから出せない兄は、キッチンに向かい、何やら手にして戻ってきました。そして、読経中の僧侶に遠慮しながらもロウソクを交換しました。そのロウソクはなんと、誕生日用のカラフルなロウソクだったのでした。
「兄貴何考えてるんや!!ふざけるのもいい加減にしろ!!」
「仕方ないやろ、これしかない!!」
付け替えられたカラフルなロウソクと、二人のやりとりに、厳粛な法事は一気に雰囲気が変わってしまい、参列者の失笑が起こる有様でした。その様子を見ていた僧侶が、休憩時間に話された一言が、参列者の心に残る一言でした。
「まぁまぁ、法事というものは、亡くなった方のお誕生日ですから、あのロウソクはまさに法事にふさわしいロウソクですよ。」

本願寺では、現在推進している宗門総合振興計画の事業として「念仏者の生活実践」という項目を制定しています。その取り組みの一環として、法事など家庭での仏事を大切にしてもらえるよう、仏事奨励リーフレット『また あえる世界』がつくられました。本文は「ご法事は誕生日」として、ご命日は亡き人がお浄土に生まれた誕生日であり、ともに手を合わせる大切な日であることがやさしく綴られています。また副文として、「またあえる世界」「ご法事は何のため」の2つのコラムを掲載して、私たちは亡き人から仏縁をいただいていることや、家庭における仏事の意義を伝えています。裏面には年忌一覧表や法事を営む際に必要な準備チェックリスト欄が設けられています。
                      http://www.hongwanji.or.jp/source/pdf/jis_mataaeru-01.pdf

この世に生まれたものは必ず命を終えてゆかなければなりません。もし死が全ての終わりならばむなしさしか残らなくなります。四苦八苦の中の愛別離苦(愛するものと必ず離れなければならない苦しみ)から逃れられない世界に生きています。ご法事は、懐かしい方をご縁として、家族や親戚が一堂に集う場で、私たち自身も終わりある人生を生きていることに気づき、亡き方との声なき対話を行う時間です。その対話を通して、南無阿弥陀仏様が私たちを救い、お浄土に生まれさせて頂く我が身であることに、気づかせて頂くことが法事の意義なのです。こんな誕生日会も、大切な時間なのではないでしょうか。