岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 看護学部⑧ 大森裕子

「うつる」の理解

岐阜聖徳学園大学看護学部准教授 大森裕子

 世界中で感染予防が最も関心の高い事柄となっていますね。今まであまり耳にすることがなかった接触感染・飛沫感染・空気感染といった感染経路を知って対策をするようになったと思います。そして、目に見えない何かから身を守るために手洗い・消毒・マスク・換気などを徹底していることでしょう。あらためて、接触感染とは、皮膚や粘膜の直接的な接触や、手、ドアノブ、ボタン等の表面を介しての接触で病原体が付着することによる感染のことです。飛沫感染とは、咳、くしゃみや会話によって飛んだつばやしぶき(飛沫)に含まれる病原体を吸入することで引き起こされる感染です。飛沫は直径0.005mm以上の大きさで、水分を含むため、届く範囲は感染源から1~2m程度と言われています。飛沫に含まれる水分が蒸発した直径0.005mm以下の粒子を飛沫核といい、空間に浮遊して広範囲に広がり、これらを吸入することで伝播することを空気感染といいます。

 私は子どもを対象にした看護を専門としています。子どもはいつからこの目に見えない何かの存在を認識できるようになるのでしょうか。2歳頃になると病気の理解が始まりますが、自分自身が目撃したもののみが事実であり、見えないものは思考に入ってこない特徴があるため、病気を表面的な現象としてとらえています。例えば、歯が痛いとかお腹が痛いというように理解します。さらに発達が進み3歳頃には、汚いものに触れると「うつる」という理解が始まり、何かを介在して病気になると考えるようになります。そして、「ばい菌」という介在物の理解を助けるには、あの有名なアニメのキャラクターの影響がとても大きいです。身体の中に「ばい菌」が入ることで悪さをするということを理解するのです。だから、「汚い手でご飯を食べたらお腹痛くなっちゃうよ。」→「ご飯の前には手を洗おう。」につながるのです。目には見えないけど「ばい菌」をイメージできることで、清潔行動(手洗い、歯磨き、入浴、着替えなど)の自立も助けるのです。

 私たちが感染予防行動をできるようになっているのは、子どもの頃に周囲の大人が理解に応じて関わってくれたおかげであることを感謝しないといけないですね。(2021.10.10岐阜新聞掲載)