岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 看護学部① 中尾治子 

100年ごとに感染症はやってくる

岐阜聖徳学園大学看護学部教授 中尾 治子

 中国武漢で新型コロナウイルスが発生し、またたく間に世界中に拡散しました。WHO(世界保健機関)がパンデミック宣言をし、わが国でも緊急事態宣言を発令して感染拡大防止に取り組みました。しかし拡大が食い止められずに医療崩壊が懸念されます。

 その感染症の発症について、現在日本内外で話題になっていることは、「感染症は100年ごとにやって来る」です。事実、1720年ペスト、1820年コレラ、1920年スペイン風邪、2020年新型コロナウイルスです。しかし、世界規模での「三大感染症」は、結核、エイズ、マラリアです。三大感染症のうち、「結核」と「マラリア」は、わが国にも昔から存在していた疾患です。また、江戸時代には「天然痘」、「コレラ」、「梅毒」によって、多くの人の命が奪われました。

 今回WHOがパンデミック(pandemic)という言葉を使い、感染大流行を意識づけました。100年ごとに感染症がやって来ると表現しましたが、感染の規模に応じて、エンデミック、エピデミック、パンデミックに分類されています。黒死病と言われたペストからSARS、MERS、新型コロナウイルス(COVID-19/SARS-CoV-2)まで様々な感染症が発生し、その発症レベルも様々です。

 感染症について、昔から問題となっているのは差別です。わが国では未だにハンセン病元患者さん達への差別が続いています。ハンセン病患者さんの強制隔離(収容)というこの差別は、防疫のためという建前によって正当化され、患者が患者の世話をするという酷い状況に置かれました。今回の新型コロナウイルスでも、感染者や医療機関の職員等が誹謗中傷されるという差別を受けています。これらの差別は、個人にとっても社会にとっても良い結果にならないことを、歴史が事実として証明しています。「怖い」という心理を他者に向けるのではなく、みんなの力でこの危機を乗り越えることができるように、各自ができる感染対策をして、安心・安全な社会にしていきたいですね。(2021年年8月22日岐阜新聞掲載)