岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞真学塾 短期大学部⑥ 木戸啓絵

センス・オブ・ワンダーとともにでかけよう

岐阜聖徳学園大学短期大学部専任講師 木戸啓絵

 長く続くコロナ禍の影響もあり、三密を避けた屋外での活動として、近所の散歩やキャンプなどの野外活動があらためて注目されています。私の専門は幼児教育の分野ですが、幼い子どもたちとっても、屋外に出て身近な環境とかかわることはとても大切です。今回は、子どもたちとお散歩をする際に、大事になる点を3つお伝えしたいと思います。これらの点は、幼い子どもだけなく、みなさんにとっても大切にしてもらいたい視点です。散歩に出かけるときにはぜひ思い出してもらえるとうれしいです。

 1点目は「定期的に同じ場所に行くこと」です。自然環境は、同じ場所であっても毎日変化が見られます。時間帯や季節によっても、出会う生き物も変わりますし、空の色合いや雲の形など、自然界の多様な変化に遭遇します。その大小様々な変化に気づいていくことは、子どもの感性の育ちにつながります。こうした感性は、老若男女問わず、人間の心の豊かさを育むものとなるでしょう。

 2点目は「自然に関する知識を得るよりも、五感で自然を楽しむこと」です。アメリカの生物学者であるレイチェル・カーソンは、「知ることは、感じることの半分も重要ではない」という言葉を残しています。子どもたちが自然の中で出会う様々な存在に対して、「センス・オブ・ワンダー(神秘さや不思議さに目を見はる感性)」をはたらかせていること、さらにそばで共感してくれる大人の存在があることが、なによりも重要であると言われています。様々な知識を得ることも素敵なことですが、知識よりも前に豊かな実体験を重ねることが、幼い子どもにとってはかけがえのない大切な時間になります。みなさんもぜひこの「センス・オブ・ワンダー」を意識して出かけてみてください。普段の見慣れた風景も、また違った形で感じられるかもしれません。

 3点目は「ゴールを目指すのではなく、いまの時間と目の前のものを味わうこと」です。お散歩では特別な目的地やゴールを決めずに、心の向くままに歩いてみましょう。いま目の前に広がる世界を子どもたちと一緒に味わってみてはどうでしょうか。例えば、今の季節ですと、少しずつ春の訪れを感じる場面に遭遇することもあるでしょう。いまこの目の前に広がる世界の豊かさに気づくことは、きっと幸せな瞬間になるのではないでしょうか。(2022年3月20日岐阜新聞掲載)