岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞真学塾 短期大学部⑧ 熊田武司

人形劇「心のゆとり」~3.21は何の日?~

岐阜聖徳学園大学短期大学部教授 熊田武司

 皆さんは、3月21日が何の日か知っていますか。

 日本では、今年は「春分の日」でした。他にもいろいろな記念日が設定されています。私が伝えたいのは、「世界人形劇の日」だということです。2003年に国際人形劇連盟(UNIMA)によって始動しました。

 毎年「世界人形劇の日」にメッセージが発せられていますが、今年はユネスコ事務局長オドレー・アズレー氏からでした。その中に「世界人形劇の日は、非常に豊かな古代から伝わる芸術をたたえる機会です。(中略)ポール・クローデルによれば、人形は行動する言葉です。実際の語りを通じて、人形は昔話や物語を生き生きさせられるのと同じように、日常を体現することもできます。文化遺産の無限なる表出である人形劇芸術は、それが厳粛な儀式の一部であろうと現在の背景に設定されていようと、まぎれもなく現代的でもあります。(訳:玉木暢子『'21日本の人形劇』より)」とあります。

 人形劇?「人形劇なんて子ども(幼児)が観るものじゃないか」と思っている人。それは違います。

 確かに日本では、現在多くの人形劇が子ども達のために制作されています。その始まりは、1923年に幼児教育者の倉橋惣三がお茶の水幼稚園の保姆(当時の表記)たちと「お茶の水人形座」をつくり、子ども達のために人形劇の上演活動を行ったことだと言われています。しかし、同時期には、芸術家である千田是也らが「新興人形劇」を始め、坪内逍遙、島﨑藤村、武者小路実篤など多くの文人も人形劇活動を行っています。

 こうして始まった現代人形劇が、幼児だけでなく病院で闘病生活を送っている子ども達や震災の後そこに暮らす人々の気持ちを和らげる一助となったりもしています。人形は、人の気持ちに寄り添う力も持っているのです。

 子どもが観て面白い人形劇は、大人が観ても面白い。勿論、大人向けに制作された人形劇もあります。いろいろなことが起こっている現在だからこそ、人形劇を観て「心のゆとり」を感じてみませんか。(2022年4月3日岐阜新聞掲載)