岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞真学塾 短期大学部⑫ 長川慶

オペラとスポーツに通じるもの

岐阜聖徳学園大学短期大学部専任講師 長川 慶

 「あれ?なんか似ているなあ」野球と料理、編み物と書道など、全然違うことの中に共通しているものがある。そんな発見をしたことはありませんか?実は、何の関係もなさそうなオペラとスポーツの中にも共通する部分があります。オペラって聞くと、大きな身体の人が、重量感のある大きな声で歌っている。そんなイメージを抱く人が多いかもしれませんが、実はあの並外れた声を出すコツが、スポーツをするコツと共通しているのです。

 そのコツとは一体何か。それは「脱力」です。え!力を抜いたらあんな声で出ないでしょ?でも真実は逆。むしろ力を入れたらあんな声は出ません。そもそも、力を入れて大きな声を出していたら、あっという間に声が枯れてしまいます。しっかり声を出しながら、どれだけ余分な力を抜けるか。オペラは一公演だいたい2時間くらいですが、長丁場で声を枯らさずに歌い続けるには「脱力」こそが成功の鍵なのです。

 ところで、この「脱力」はスポーツの世界でもよく耳にします。以前、プロ野球の投手が、速いストレートを投げるコツは、身体に力を入れず、投げる瞬間にだけ力を込めることだと話していました。また、あるプロゴルファーは、ボールを遠くに飛ばすためのアドバイスとして、30%くらいの力でスイングするのが重要だと話していました。そして「30%の力でスイングしてくださいと言うと、ふり幅も30%になってしまうので、ふり幅は100%、力は30%で打つのですよ」とも。このプロゴルファーのアドバイスは、声は100%出しながら、身体は30%の力で歌うというオペラ歌手の歌い方にそのままぴったり当てはまります。

 そんなふうに周りを見回してみると、「脱力」はスポーツ以外の動きにも共通しています。しなやかに踊るダンサーしかり、鮮やかな手捌きで食材を切る料理人しかり。結局、身体を上手に使うことは、「脱力」に集約されていくのですね。

 今、一生懸命勉強しているみなさんももし行き詰まりを感じた時は、ふと力を抜いてみてはどうでしょうか。さらに勉強がはかどったり、良い考えやアイデアが浮かんだりするかもしれませんよ。(2022年5月1日岐阜新聞掲載)