岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 経済情報学部① 難波安彦

コロナ禍と経済

岐阜聖徳学園大学経済情報学部教授 難波安彦

 現在、新型コロナウイルス対策は「感染抑制」と「経済回復」のバランスをどうとるかを中心に議論されています。コロナ感染で失われる命や医療崩壊によって失われる命だけでなく、経済が回復しないことにより自殺に追い込まれて失われる命についても考えることが必要だからです。

 ここでは特にコロナ禍の中での「経済回復」について考えたいと思います。

 今回のコロナ禍による経済の落ち込みと停滞は、社会全体の需要である総需要の落ち込みが原因と考えられます。需要とは家計・企業などが市場において購入しようとする欲求のことです。総需要が落ち込むと社会全体で商品が売れなくなり、商品が売れないことから社会全体の生産が落ち込み、求人が減って失業等が増えることになります。

 身近な例をあげれば、感染防止のために皆さんが外食を自粛すると、外食産業が提供する料理等への需要が減少するということになります。外食産業は、食材、飲料、おしぼり等を提供するさまざまな産業につながっています。

 従って、必要なことは医療崩壊を起こさない程度に感染者数を抑制しつつ、総需要を回復させることです。では需要回復のために何をすべきでしょうか。

 外食産業が当初から取り組んできたテイクアウトやデリバリー、ネット通販等のような工夫が大事です。ただ、社会全体として長期的に考えると、成長産業への需要が高まるようにすることがより重要です。注目すべきことは、コロナ禍のために進んだ、成長産業への需要の高まりがあることです。一つ例をあげれば、感染防止のために進められたリモート勤務や遠隔授業は、パソコン等への需要、即ち、情報通信機器産業への需要をこれまで以上に高めました。それは新しい社会と目されているデジタル化社会への歩みを進めることでもありました。

 つまり新型コロナウイルスは大変な厄災ですが、自ら引き起こした経済の停滞を打開する成長産業の隆盛を促す側面もあり、その成長産業の隆盛は未来社会につながる可能性を秘めたものでもあるのです。(2021.3.21岐阜新聞掲載)