岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 経済情報学部③ 伊藤 薫  

地域活性化を探究する

岐阜聖徳学園大学経済情報学部教授 伊藤 薫

 筆者は、地域活性化の講義をしています。飛騨高山の観光振興の成功、各務原市の名前を全国に広めた各務原キムチ、IT産業集積を創りあげた大垣市のソフトピアジャパンなど、興味深い実例がいくつもありますね。今回は、岐阜市の玉宮通り商店街と名古屋市の大須商店街を紹介します。

 岐阜市の玉宮通り商店街は、柳ケ瀬商店街とJR岐阜駅に挟まれた280mほどの細長い商店街です。1990年前後に郊外のショッピングセンターの増加、県庁の移転、車社会の進展でさびれてしまいました。地元の皆さんが打った手は、玉宮通りまちづくり協定です。1992年に地権者全員100名ほどの方々が賛成して始まりました。半地下の建物を奨励するなどさまざまな内容ですが、懸案の6mの狭い道幅を広げるために新築・改築の際に建物の前に1.5mの前面空地をつくり、無償で提供することとしたのです。来街者は、ゆったりと歩けますね。当時のリーダーは「利益を生むには、自分たちの奉仕から始まる」といっています。

 名古屋市の大須商店街は、大須観音の門前町で古い歴史があり、東西約600m、南北約400mで囲まれた大須地区に大須商店街連盟加盟店が約400店舗あります。1974年に市電(路面電車)が廃止になり、また車社会の進展で1970年代には人の流れがばったり途絶えたそうです。地元の皆さんが打った手は、徹底した話題づくり、イベントの開催でした。1978年に始まった大須大道町人祭りは、地元の皆さんが実行委員会をつくり、全て手作りで1年かけて準備をするそうです。実行委員長の経験者が増えた商店街の人材育成が成功理由の一つと聞きました。昔のリーダーから「知恵があるなら知恵を出せ、知恵がないなら汗を出せ、知恵も汗も出ないなら金を出せ」と伺いました。

 玉宮通り商店街も大須商店街も2006年に経済産業省中小企業庁の「がんばる商店街77選」に選定されました。共通するのは、地元の皆さんの熱い思い、熱意ですね。市役所ももちろん協力しています。中学生の皆さんもこうした地域活性化の実例を探求してみたらいかがでしょうか。(2021.4.4岐阜新聞掲載)