岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞真学塾 経済情報学部⑬ 鈴木貴晶

オークションの仕組みを考える

 岐阜聖徳学園大学経済情報学部 准教授 鈴木貴晶

 オークションに参加したことはありますか?有名な絵画がオークションで落札される様子はニュースでよく見ますし、魚の"競り"や道路の工事をどの会社が請け負うかを決める"競争入札"もオークションの一種です。ネットオークションの普及もあり、オークションはより身近なものになっています。

 オークションでは入札額をいくらにするかで悩むでしょう。あなたとAさんの二人がある商品のオークションに参加していると想像してください(人数を増やしても構いません)。あなたはこの商品に1万円までなら出せるけれど、それより高いなら要らないと思っています。二人は入札額を一斉に公開し、「最高額を入札した人がその入札額で買う」ルールとします。さて、あなたはいくらを入札しますか?

 自分が入札した額を支払うのなら少し低めに入札したくなります。そう考えてあなたは7000円を入札し、Aさんの入札額が8000円だったとすると、商品はAさんが8000円で手に入れることになります。8000円なら喜んで買ったのに...とあなたは後悔してしまうでしょう。

 こうした後悔をなくす仕組みはあるでしょうか。「最高額を入札した人が二番目に高い入札額で買う」ルールを考えてみます。この場合、Aさんの入札額が9000円なら、あなたの入札額が1万円でも9500円でも、あなたは9000円で商品を手に入れます。

 実はこのルールにおいては正直に1万円を入札するのがあなたの最善策になることが①②より証明できます。①1万円より低く入札しても良いことはありません。まず、低い入札額では負けてしまう可能性が増えます。また、その入札額で勝ったとしても支払う額はAさんの入札額なので、1万円を入札したときと変わりません。②1万円より高く入札しても良いことはありません。1万円の入札では勝てなかった場合にも勝てるようになりますが、そのときはAさんの入札額も1万円を超えているので、あなたは1万円より大きな額をその商品に支払うことになってしまいます。

 このルールを採用すれば各参加者は正直に入札すると考えられ、結果として先に述べたような後悔はなくなるでしょう。このルールは「二位価格オークション」と呼ばれ、その考案者であるヴィックリーは1996年にノーベル経済学賞を受賞しました。また2020年にもオークションの研究や実用化に大きく貢献した研究者が同賞を受賞しています。経済学は社会の仕組みを理解するためだけでなく、仕組み作りにも役立っています。(2021.6.13岐阜新聞掲載)