岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 経済情報学部㉒ 渡邉厚代 

 自然・地域・歴史・文化と繋がる「食」が人の心を育み、社会を育む

岐阜聖徳学園大学経済情報学部教授 渡邉 厚代

 「食」は、命の源です。生きるため、命を繋ぐための食は、まさに命と直結しています。それだけでなく、自然・地域・歴史・文化と繋がる「食」は、人の心を育む土壌であり、社会を育む土壌であるといえるのではないでしょうか。

 20世紀は、機械工業による大規模・大量生産が実現されたことで、様々な加工食品も大量に生産することが可能となりましたが、多くの生活者は、生産者とほとんど繋がりをもたず、多くは店頭で、消費者あるいのは購買者として商品と関わってきました。まさに、世界の先進国において、生産の効率化による大量生産→大量流通→大量消費による「食の画一化」が急速に浸透した世紀であったといえます。これは豊かさの結果であるといえるのでしょうか。

 みなさんは、「スローフード運動」を知っていますか。1980年代にイタリアで起こされた運動です。アメリカのファーストフード一号店がロ―マに出店したことをきっかけに、「世界中いつでもどこでも同じ味」というファーストフードの食の画一化に対する問題提起が共有されます。そこで、①地域生産者によって丁寧に育てられた食材、②その土地土地に適した食材、③きちんとした食の文化を守る、④若年層たちに食文化を引き継ぐという強い思いを持って、この運動がスタートします。20周年を迎えた時点で、以下の様に表現を変えて、3つの柱が掲げられています。

 おいしい(GOOD)⇒美味しく、風味があり、新鮮で、感覚を 刺激し、満足させること。

Ⅱ きれい(CLEAN)⇒地球資源、生態系、環境に負担をかけず、 また、人間の健康を損なわずに生産されること。

Ⅲ ただしい(FAIR)⇒生産から販売及び消費にわたって、全ての 関係者が適正な報酬や労働 条件にある、社会的公正を尊重すること。

 運動は、持続可能な未来を見据えて、地球規模での人類の生存に関わる課題と直結した食への取り組みとなって、世界に広がっています。個々の一人一人が、自然・地域・歴史・文化と繋がる日々の食の重要性に気づくことは、生かされている命である人の心を育み、社会を育むことになるのではないでしょうか。(2021年8月15日岐阜新聞掲載)