岐阜聖徳学園大学 岐阜聖徳学園大学短期大学部

岐阜新聞 真学塾 経済情報学部⑯ 中村あずさ 

自然環境問題を経済学でみる   

 岐阜聖徳学園大学経済情報学部准教授 中村あずさ

 次回の気候変動枠組条約締約国会議(COP 26)はグラスゴーでの開催が予定されています。COP21でパリ協定が採択されてから5年以上が経過しました。パリ協定は京都議定書に代わる温室効果ガスを削減するための枠組みで、京都議定書よりも参加国が増えました。本稿では温暖化を含む自然環境問題を、経済学ではどのように捉えるかをみます。ここで、2つの質問をします。

・この1年間で何にお金を使いましたか。

 ゲーム機、家電、お菓子作りの材料、お米、卵、美容院...と様々な例が挙がるでしょう。使えるお金には限りがあるので、欲しい物が全て手に入るわけではありません。けれども、何にお金を使うかは、ある程度は選ぶことができます。「あちらの掃除機の方が吸引力が強いけれど高いし、色があまり好きではないな。こちらの方が軽いし性能も十分だから、こっちにしよう」というようにです。

 では、次の質問はどうでしょうか。

・どうすれば、今よりも満足した生活が送れると思いますか。

 今でも十分満足しているという幸せな読者もいるでしょう。その場合は、今の生活から何がなくなったら困るかを考えてみてください。2つ目の質問の答えには、1つ目の質問と同じ答えが入っているかもしれません。一方で、お金では簡単には買えないものも入っている可能性があります。実は、良い自然環境も2つ目の質問の答えに入っていると考えられます。ただし、自然環境の場合は、個人のお金で自分の好きな状態を選ぶことは、非常に難しいです。掃除機を選ぶときと同じようにはいかないのです。他人、ときには海外の人の行動も、私たちを取り巻く環境に影響を与えるためです。このことから、「自分はそこまでがんばらなくても、周囲の人たちが何とかしてくれるかもしれない」という気持ちも生まれやすくなります。そのため、自然に解決するのを待つのではなく、国際的な取り組みが必要となるのです。グラスゴーでの会議の行方はどうなるでしょうか。(2021.6.4岐阜新聞掲載)